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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

熊本地震、誰でもできる有効かつ新たな被災地支援とは?「返礼品なし」でふるさと納税

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表

ふるさと納税の問題点も

 ところが最近ではどうやらこのお礼の品物だけが注目されるようになり、マネー誌でも頻繁に「ふるさと納税」特集が掲載されるようになりましたが、そのほとんどは「どこの自治体はどんなプレゼントが送られてくる」といった紹介ばかりです。前述のように本来は「応援」の目的で行い、それをすることで「税のしくみ」を勉強できるというとても優れた制度であるにもかかわらず、興味や関心はほとんどお礼の品物だけに向いてしまい、今やネットショッピングの場と化しているといってもいい過ぎではありません。

 もちろんプレゼントに惹かれて納税(=寄付)をするのが悪いというわけではありませんが、本来の目的や狙いからは大きく逸脱していることは否めません。実際にそうやってうまく寄付金を集めた自治体とアピールの下手なところでは、集まるお金に大きな差が生じているともいわれています。

 これを競争原理といってしまうのは簡単ですが、そもそも自治体の間でのプレゼント合戦が、本来のふるさと納税の目的であるとは到底思えません。逆にこれが将来、自治体の財政にとってのさらなる大きな不均衡という問題に発展する可能性もないとはいえません。

被災地を「ふるさと納税」で応援する

 そんななか、最近の九州・熊本地震で被害にあった地域の自治体に対して「ふるさと納税」で支援しようという動きが出てきています。被災地に対する寄付や支援というのは、さまざまな団体や組織を通じて行われていますが、この「ふるさと納税」を使えば、ダイレクトに被災地の地方自治体にお金を届けることができます。それもネット上で手続きが簡単にできます。さらに、寄付金の使途についても指定できるようになっているのです。

 もうひとつの特徴は、お礼の特産品が付かないということです。仮に付いたとしても、寄付をするときのコメントに「返礼品は不要です」と書けば送られてくることはありません。私自身も今回の地震で南阿蘇村にふるさと納税をしましたが、返礼品はありませんでした。これはとても良いことだと私は思っています。

 震災後の支援にはいろんなかたちがあります。現地へ出かけて行ってボランティアで復旧活動に従事するのも素晴らしいことですが、過去に多くの被災地の方からの声を聞くと、一番の復興支援は「その土地の品物を買ってあげること」だとおっしゃいます。

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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