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アマゾン、なぜ急速にコストコ化?会員を「無料&特典漬け」で客囲い込みに本腰

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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 コストコアマゾンも、その本社はアメリカ西海岸、シアトル近郊にある。『ジェフ・ベゾス 果てなき野望~アマゾンを創った無敵の奇才経営者』(ブラッド・ストーン著)によると、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスは01年、コストコの創業者ジム・シネガルと初めて面会し、ビジネスや小売業に関するさまざまなヒントを授かっているが、そのなかにコストコの「会費制」のノウハウもあった。その核心は「忠誠心(ロイヤルティ)」で、年会費を払って会員になり、コストコへの「忠誠心」が高い顧客をいかに獲得し、増やしたか、ジム・シネガルは将来ライバルになるかもしれないジェフ・ベゾスに対しオープンマインドに、詳しく説明したという。

消費者の忠誠心

 消費者がコストコに忠誠心を持つとは、どういうことなのか。日本では4320円の年会費を支払えば「ゴールドスターメンバー(個人会員)」になり、会員カードが発行される。家族カードは1名まで無料で発行。会員になるのと引き換えに、原価に近い安い価格で商品を購入できる権利が得られる。会員カードを持っていないと、コストコに来ても中に入れてもらえない。紹介入店や体験入店の制度はあるが、勘定は割増となる。

 この「会員だけの権利が持てること」が忠誠心の主な源になっている。1回の買物で支払う金額が数百円から数千円程度しか違わなくても、コストコの会員になると、人によってはだんだんほかの大型小売店では買物をしなくなり、継続会員になる。それが忠誠心の高い会員を獲得した、ということである。

 それ以外に、従業員の時給を他社より高くして従業員満足度を高めて離職率を低下させ、接客対応が良い明るい売場に好感を持ってもらい、会員の忠誠心を高めるというやり方もとっている。これは日本でも同様である。

 消費者の忠誠心は小売業にとって最大の価値がある資産で、コストコにとっては生命線。それはアマゾンにとっても同じだと、ジェフ・ベゾスは認識したはずだ。会員制は、不特定多数の人に発行して来店を促すだけのポイントカードなどよりも頼りになる囲い込みツールだといわれているが、アマゾンはそこに目をつけた。

 年会費と引き換えに数々の優遇策を受けられるアマゾンプライムには、アイデアを授けてくれたジム・シネガル、そしてコストコのビジネスモデルへのリスペクトが込められている。アマゾンはコストコと違って誰でもネット上で買物ができるが、「会員だけの権利」を持つアマゾンプライム会員を増やすことにより、アマゾンは「ネット通販界のコストコ」になることを志向している。日本では4月の送料の有料化が、その大きなターニングポイントになるかもしれない。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)

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