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雨宮寛二「新・IT革命」

アマゾン、人気動画投稿者に毎月1億円支払い…動画投稿サービス開始で顧客囲い込み強化

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「Amazonビデオダイレクト」のサイト
 5月10日、米アマゾンがついに動画投稿サービス「Amazonビデオダイレクト」を開始した。ここ数年アマゾンが映像配信サービス分野に注力してきたことを考えれば、動画投稿サービスを立ち上げるのは時間の問題であったかもしれない。それが、この分野で先行するあの巨人YouTubeと競合することになったとしてもである。


 ジェフ・ベゾスCEO (最高経営責任者)は、2014年のゲーム動画ストリーミングサービスTwitch買収を皮切りに、その後、AmazonプライムビデオやAmazonプライムミュージックを次々と開設し、物販拡充の次はデジタルコンテンツの充実だといわんばかりに映像配信事業に取り組んできた。

 それでは、Amazonビデオダイレクトの狙いは何か。それは、YouTubeの牙城を崩すというよりも、「オリジナルコンテンツを増やす」ことにある。その理由は、本サービスがAmazonビデオに組み込まれた新プログラムであることはもちろん、マネタイズ(収益化)の充実が図られている点に見て取れる。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 マネタイズには、YouTubeのように無料公開動画の配信による広告収入(広告収入の55%がクリエイターの取り分。YouTubeと同率)のほかにも、プライムビデオ配信による視聴時間に基づくロイヤリティ(15セント<約16.5円>/時間がクリエイターの取り分で年間7万5000ドル<約825万円>が上限)や動画の販売・レンタルによる売上収入(販売価格の50%がクリエイターの取り分)、さらにはストリーミングパートナープログラムを通した販売収入(同55%)が用意されている。

 こうしたさまざまなマネタイズの手段は、コンテンツクリエイターやビジュアルクリエイターが直接Amazonビデオに映像作品をアップロードするのを促進する後押しとなるばかりか、一般の視聴者にとっても質の高いバリエーションに富んだコンテンツサービスが享受できるようになるという点で有効な打ち手となる。

会員やエコシステムから抜け出せなくなるための施策


 これらの手段のほかに、さらにアマゾンは「アマゾンビデオダイレクトスター」といった施策を用意して、オリジナルコンテンツを自社のプラットフォームに呼び込む仕掛けづくりをしている。それは、アマゾンダイレクトで配信されたコンテンツのトップ100に上限100万ドル(約1億1000万円)を毎月配分するというもので、競争環境づくりによる質の向上にも余念がない。

 そもそもアマゾンビデオダイレクトを新たなプラットフォームとして開設した背景には、Amazonプライムのリテンション(既存顧客維持)を強化するという目的があるが、最終的には、視聴者ばかりかコンテンツ制作者もが会員やエコシステムから抜け出せくなった時点で、プライム会員費などを値上げするという目論見が見えてくる。そのための打ち手として、アマゾンは今後もさまざまなプラットフォームを出してくるに違いない。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)