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雨宮寛二「新・IT革命」

アマゾン、プライム会員向け「豪華すぎる」無料サービス拡充…格安PB投入の衝撃

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サイト「アマゾン」より
 米アマゾンによるプライム会員プログラムの次なるターゲットが判明した――。それは、プライベートブランド(PB)である。


 プライム会員プログラムといえば、これまで楽曲や映画のストリーミングサービスをはじめ、1時間以内の配送サービス、動画サイトによるオリジナルコンテンツサービスなど、デジタルコンテンツの提供から配送サービスに至るまで多くのサービスが拡充されてきた。それもすべてフリー(無料)による提供だ。

 今回アマゾンは、PBにその矛先を向けた。新ブランドは、「ハッピー・ベリー(Happy Belly)」「ウィキッドリー・プライム(Wickedly Prime)」「プレスト(Presto!)」「ママ・ベアー(Mama Bear)」の名称で、ナッツや香辛料、コーヒー・紅茶、スナック食品、洗剤、さらには、離乳食や紙おむつに至るまで日用品を中心にラインナップを揃える。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 アマゾンがこれらの商品をPBとして売り出すメリットは、まさにコスト面で優位に立てることにある。元来PBでは、営業や宣伝費用が不要となることから、ナショナルブランド(NB)製品より粗利率において有利に立てる。また、独自販売であることから販売価格を自由に設定でき、原材料の調達や製造方法などでも自社独自の裁量が効くため、商品にオリジナリティのある付加価値をつけることが可能となる。

 アマゾンとしては、こうしたPBの利点を生かして販売数を伸ばし、利益率の高い市場を構築していく意向であろう。すでに膨大な販売データを蓄積しているアマゾンにしてみれば、いかなる製品が売れるかを的確に予測できるに違いない。

過去の失敗の教訓


 だが一抹の不安も残る。これまでにもアマゾンはPBを市場に投入してきた。2005年8月にはアマゾン初のPBである「ピンゾン(Pinzon)」を立ち上げ、家庭用品や日用雑貨の販売を開始した。これを皮切りにその後徐々に商品を拡大していくが、14年12月に立ち上げた「エレメンツ(Elements)」ブランドでは、赤ちゃん用の紙おむつなどを発売したものの、翌年には販売中止に至っている。

 こうした経験を踏まえて、今回アマゾンは生鮮食品分野にも本格的に参入していく意向である。ウォルマート(Walmart)やコストコホールセール(Costco Wholesale)、ターゲット(Target)など競争力を高めた事業者がひしめく米国小売市場では、すでに生鮮食品販売の収益性が高いことは知られている。

 コストを抑えて収益性を高める方向に舵を切ったアマゾン。PBの新たな立ち上げは、プライム会員プログラムのブランド価値を高め、リテンション(既存顧客維持)につなげる策として果たして有効に機能するのか。PBの販売開始は、5月末か6月上旬予定とのことである。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)