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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

なぜバフェットは投資で高収益を達成し続けられる?なぜノウハウ公開でも他の人は失敗?

文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授

・高資本効率性企業のフリ:ROEを良く見せる

 この点はこれまで本連載でも紹介してきたものですが、自社株買いによりROEの分母である株主資本を圧縮することにより、分子である当期純利益が不変であってもROEは改善することになります。ROE目標を公表し、競争激化により利益を拡大することが困難な状況下において、何がなんでもROE目標を達成しようとする「ROE逆算経営」においては、自社株買いは非常に有効なツールとなります。

 一方、バフェットの自社株買いの基準には複数の要件がありますが、それらはファイナンス理論に合致するものです。今年の手紙ではPBR(株価純資産倍率)に関する基準が紹介されています。

 バフェットは、バークシャー・ハザウェイの内在価値(理論的な価値であり、時価とは時に異なるもの)が簿価を大幅に上回っていると考えており、PBRが1.2倍にまで下落した場合には、十分に割安だと考えて自社株買いを行うと述べています。PBR1割れが割安の判断基準とされることが多いですが、バークシャー・ハザウェイの資産にはコカ・コーラアメックスなどの有価証券(時価評価の対象となる)だけでなく、多数の買収先(業績が悪化すると減損が求められるが、業績の改善では価値が上方修正されないという会計の非対称性が存在する)が含まれており、PBR1割れは基準として低すぎるということでしょう。

 いずれにせよ、投資家としては自社株買いの基準が明確であり、また株主としては株価が過度に割安に放置される状況に対して企業が対応してくれるという安心感があります。これがまさにバフェットが言う「株主にフレンドリー」ということだと考えられます。

アクティビスト型のアプローチは取らない

 私が今年の「株主の手紙」でもっとも印象的だったのが、バフェットの投資アプローチがより明確になったことです。バフェットは、ケチャップで有名なハインツを買収しましたが、単独での買収ではなく3Gキャピタルとのパートナーシップによるものでした。ただし両社の投資アプローチは異なっており、今年の「株主の手紙」ではその点を解説しています。結論からいうと、3Gキャピタルはアクティビスト型であり、バフェットはそうでない、ということです。3Gキャピタルのアプローチを以下のように説明しています。

「彼らがこれまでダントツの成功を収めてきたアプローチとは、多くの不要なコストを排除するチャンスのある企業を買収し、そしてコストの排除を素早く実行することである。彼らの行動は大幅に生産性を改善しており、これは過去240年にわたる米国の経済成長において非常に重要な要因である。」

手島直樹

手島直樹

慶應義塾大学商学部卒業、米ピッツバーグ大学経営大学院MBA。CFA協会認定証券アナリスト、日本アナリスト協会検定会員。アクセンチュア、日産自動車財務部及びIR部を経て、インサイトフィナンシャル株式会社設立。2015年4月より現職。著書に『まだ「ファイナンス理論」を使いますか?-MBA依存症が企業価値を壊す』(2012年、日本経済新聞出版社)、『ROEが奪う競争力-「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(2015年、日本経済新聞出版社)、『株主に文句を言わせない!バフェットに学ぶ価値創造経営』(2016年、日本経済新聞出版社)。

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