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損保Jと日本興亜、「国内最大」のためだけに合併→速攻で首位陥落の危険…興亜は完全消滅か

文=編集部
損保Jと日本興亜、「国内最大」のためだけに合併→速攻で首位陥落の危険…興亜は完全消滅かの画像1損保ジャパン日本興亜本社ビル(「Wikipedia」より/Rs1421)

 4月1日、損害保険大手4社の社長が一斉に替わった。

 東京海上日動火災保険は北沢利文氏、損害保険ジャパン日本興亜は西澤敬二氏、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険は原典之氏、同グループのあいおいニッセイ同和損害保険は金杉恭三氏が、それぞれ社長に就任した。4人の共通点をあえて挙げれば、商品開発出身ということになるだろうか。

 各社ともIT(情報技術)の活用による商品・サービスの拡充に積極的に取り組む。主力の自動車保険で走行データの活用が進んでおり、ITが保険商品のあり方を変える可能性がある。

 トヨタ自動車とあいおい損保は、4月、米国で共同出資の保険会社を設立。来年中にも自動車に搭載したセンサーで集めた膨大な運転データを保険料に反映する、「テレマティクス保険」と呼ばれる新型の自動車保険を開発する。

 テレマティクスとは、自動車の車内に測定器を取り付け、ブレーキの踏み方や走行距離などの運転特性をインターネット経由で解析する技術のことだ。解析された運転の仕方の違いに応じて保険料を変動させる保険をテレマ保険という。欧米で2020年に自動車保険の3割以上にテレマ技術が導入されるといわれている。

 金杉社長は「英国のほか独仏などでもテレマ保険事業を展開し、20年には欧州でトップを目指す」と意気込む。すでに欧州やアジアなど24カ国のトヨタの販売店で通常の自動車保険を売っているが、今後はそれをテレマ保険に移行させるほか、テレマの技術だけを地元の保険会社に提供し、手数料で稼ぐビジネスにも取り組む考えだ。

 あいおい損保は昨年4月、テレマ保険で実績のある英自動車保険会社、ボックス・イノベーション・グループを買収。トヨタの新しいナビゲーションシステムの搭載車を対象に、実際の走行距離をもとに保険料を割り引くサービスを始めている。

 高齢の運転者に危険を知らせるサービスの開発も進めており、事故が減れば保険金の支払い負担も軽減される。さらに、テレマ技術は自動車以外でも応用が期待されている。金杉社長も「ウェアラブル(携帯型)端末を使って健康管理などにも活用される。積極的に取り組みたい」と語る。

内紛の火種がくすぶる損保ジャパン日本興亜

 東京海上や損保ジャパン、三井住友海上も同種の自動車保険の取り扱いを始めているが、欧米勢に比べて出遅れている。人工知能(AI)をサービスにどう生かすかも重要な経営課題だ。4人の新社長の腕の見せどころである。

 損保ジャパンの持ち株会社、損保ジャパン日本興亜ホールディングス(HD)は介護事業に進出した。3月、介護大手のメッセージをTOB(株式公開買い付け)で子会社にした。買い付け価格は571億円。持ち株比率は発行済み株式の94.63%になった。6月に社名を「SOMPOケアメッセージ」に変える。

 居酒屋チェーンを展開するワタミの介護事業、ワタミの介護(現・SOMPOケアネクスト)も買収した。損保ジャパンHDの介護関連の売上高は年間1100億円規模となり、ニチイ学館に次ぐ業界2位に躍り出た。介護の課題解決への助言をもらう有識者の諮問会議を設け、損保業界を担当するアナリストからは「とうとうルビコン河を渡ってしまった」と懸念する声が上がった。西澤氏は、ワタミの介護、メッセージと介護事業を立て続けに買収して剛腕ぶりをみせ、社長にまで昇り詰めた。

 介護ビジネスは体力勝負だ。大手の新規参入が相次ぐ。保険業界は保険金の代わりに介護サービスを提供する「現物給付型保険」を視野に、介護事業との相乗効果を狙う。確かに介護保険適用サービスの市場規模は14年度で10兆円。高齢者の増加で25年度には21兆円に膨らむ見通しだが、介護業界には“事件”が少なくない。金融機関が親会社だと標的になりやすいとの指摘もある。

 同じグループでありながら、「水と油」だった損保ジャパン(SJ)と日本興亜(NK)は国内最大損保をスローガンに14年9月に合併した。単体損保としては国内最大となったが、銀行との連携を強める三菱グループの東京海上の巻き返しに遭い、国内首位の座を奪い返されそうな雲行きだ。介護事業進出は首位防衛策の一環だ。

 介護企業のM&Aを仕切ったのはSJ側で、人事でも主導した。合併時のトップは、持ち株会社がSJ出身者、事業会社がNK出身者というたすき掛けだったが、このルールが覆された。NK出身の二宮雅也社長が会長に退き、SJ出身の西澤氏が事業会社の社長に就任した。

 持ち株会社の社名は今年10月、これまで略称として用いていたSOMPOホールディングスとなり、日本興亜の名前が消える。

 これに対するNK側の不満が強いことから、事業会社には日本興亜の名前を残し、異様に長い社名は存続する。しかし、介護事業で目覚ましい成果を上げれば、事業会社もSOMPOになるだろう。だが、不祥事が絶えない介護ビジネスで躓けば、SJとNKの内紛が火を噴くことになる。

新社長の共通点は「商品開発」

 東京海上の北沢氏は、39年の会社人生のうち25年間は商品開発に携わった。入社直後に赴任した仙台が原点となっており、ある高齢者の自転車事故をきっかけに、現在の自転車保険の原型となる商品を独自開発した。気象庁や大学で台風の研究をするなど、災害保険の開発にも取り組んだ。10年から4年間は東京海上日動あんしん生命保険社長、14年から本体の副社長を務めた。1953年長野県生まれ、77年東大経済卒である。

 損保ジャパンの西澤氏は、14年の合併と同時にグループCIO(最高情報責任者)に就任した。その半年前に、経営企画部門にICTグループを設置した。商品開発にITシステムは不可欠で、「ITの専門家集団であるIT企画部門こそが、経営の戦略スタッフの役割を果たすべき」が持論。「顧客の嗜好や利便性をデジタル化で高めないとライバルに差をつけられてしまう」と危機感を持っている。1980年慶大経済卒、2010年に取締役常務執行役員に就任し、15年から副社長を務めた。

 三井住友海上の原氏は、営業や人事を中心に歩んできたが、10年前に未経験の商品開発の担当となった。業界全体の大問題に波及した保険金不払い問題を受け、商品や約款を見直した。長野県出身で1978年東大経済卒。旧大正海上火災保険に入社し、自動車保険部長、企業品質管理部長を歴任。08年に執行役員、15年に取締役副社長に就任した。

 あいおい損保の金杉氏は、経営企画や人事畑を歩いた。鈴木久仁前社長とコンビで過去10年間、統合・合併を進めてきた。東京都出身で1979年早大政経卒、旧大東京火災海上保険に入社し、09年に執行役員、13年に取締役専務に就任した。
(文=編集部)

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