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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

カラオケのジョイサウンド、なぜあの自由すぎるミシン会社が開発?常識に逆行の変身経営

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

「創業事業のミシンもグローバル市場では競争力があり、家庭用ミシンは米国で高機能のミシンが好調です。工業用ミシンでは中国市場が好調でした。15年度の工業用ミシン事業は前期比で12.7%のプラス、307億5800万円の売り上げを記録しています」(同)

カラオケのジョイサウンド、なぜあの自由すぎるミシン会社が開発?常識に逆行の変身経営の画像3工業用ミシン

 同社の多角化には2種類ある。前述した事業の多角化と地域の多角化だ。15年度の市場別構成比でいえば、米州(北米から南米)が33.9%、欧州が25.7%、アジアほかが16.9%、日本が23.5%となっている。そのため、リーマンショックや円高で一時的に業績が落ち込んでも致命傷には至らない。海外比率が高いので、東日本大震災でも軽微な影響で済んだ。

「もともと辛抱強く事業を持ち続けるのも、当社の特徴です。消費者が大幅に減った編み機のようにあきらめた事業もありますが、採算が取れていて市場優位性がある事業は持ち続けます。工作機械の事業も、以前は撤退すべきだという意見もありましたが、継続したおかげで現在は稼ぎ頭の事業となっています。こうした景気の波に影響されやすい事業も複数持っていれば、何かが落ち込んでも別の事業が支えてくれるのです」(同)

 中長期視点で事業を継続した結果、時には相撲のうっちゃりのような現象も起きる。たとえば、ファクス事業は、かつて米国で低価格の新商品を投入して息を吹き返したこともあった。今でも同国では高いシェアを持つ。これはファクス市場の縮小で、競合が相次いで開発から撤退したこともあるが、事業を手放さない姿勢が残存者利益につながった。

 また、前述した通信カラオケも、元をただせば86年に発売した「TAKERU(タケル)」というパソコンソフト自動販売機の技術だった。今では理解できる技術だが、あまりにも時期尚早で、わずか300台ほどを売っただけで撤退した。しかし担当者は経営陣を説得して撤退費用の予算を勝ち取り、その費用で密かに新たな通信インフラを構築。これが通信カラオケに結びついたのだ。権威主義の会社では社員も委縮してその発想も出ないだろう。

カラオケのジョイサウンド、なぜあの自由すぎるミシン会社が開発?常識に逆行の変身経営の画像4通信カラオケ「JOYSOUND MAX」

事業構造の組み換えに挑む

カラオケのジョイサウンド、なぜあの自由すぎるミシン会社が開発?常識に逆行の変身経営の画像5コーディング・マーキングの印刷例

 そんなブラザーも正念場を迎えている。電子文具と合わせて全売上高の約64%を占める主力のプリンター事業の頭打ちだ。3月、同社は3カ年の中期戦略を発表したが、会社としてめざす姿を「未来永劫の繁栄に向けて、変革や成長領域に挑戦し続ける複合事業企業」と記し、一般向けプリンター事業に寄りかかる構造からの脱却を掲げる。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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