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英国のEU離脱、未曾有の世界同時景気後退の兆候…欧米各国、自国第一主義で協調崩壊

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 英国がEUから離脱すると、英国に欧州拠点を置く金融機関は、他のEU加盟国での業務に支障が出る恐れがある。これは、対英直接投資の減少につながるだろう。経済環境が悪化すれば、景気刺激のための財政支出も必要になる。それが英国の信用格付けの引き下げにつながるだろう。すでに、大手格付け業者は、EU離脱が英国の格付けにマイナスだと指摘している。

 キャメロン首相らEU残留を訴える政治家は、経済上の恩恵を強調し、離脱は英国にとってマイナスだと主張してきた。しかし、結果的にみれば、英国民は経済の合理性よりも、むしろ主権奪還を目指す感情に圧されて離脱を選択したといえる。

国民投票の結果に対する金融市場の反応

 ロンドン時間の6月23日(東京時間の24日)、国民投票の開票が進むにつれ、想定以上に離脱への投票が多いことが判明した。これは市場には予想外の展開であり、多くの投資家が慌ててリスク回避に動いた。こうして、アジア時間の金融市場は大きく混乱した。

 特に大きく動いたのが英ポンドだ。前日比で、ポンドは対ドルで11%、対円では15%程度下落する場面があった。ドル・円の為替レートは東京時間の昼間に99円台まで急落し、米国の長期金利は一時1.4%台前半に低下した。ドイツの超長期国債の利回りもマイナス水準に落ち込む場面があるなど、急速なリスク回避が進んだ。

 欧州の金融市場では、英国の株式市場よりもイタリアやスペインの株価が大きく下落した。こうした南欧諸国では、国債の利回りも上昇(価格は下落)した。これは2010年半ば~12年夏場にかけて、ユーロ圏のソブリン危機(財政危機)が発生した時の金利の動き方とよく似ている。

 おそらく、多くの投資家は英国の離脱を受けてEUの政治が不安定になることを危惧したのだろう。国民投票の結果、オランダやフランスなどでもEU離脱を求める動きが進んでいる。ドミノ倒しのようにEU加盟各国が離脱を模索し始めるなら、市場はこれまで以上にリスク回避に動く。

 その場合、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和や資金供給によって景気をなんとか支えている欧州周辺国は、厳しい状況に直面するはずだ。再度、南欧諸国の信用格付けが引き下げられ、財政懸念が今以上に高まることも否定はできない。その懸念から、南欧諸国の国債や株式が売られたのだろう。長期的に考えると、オランダなどが本当にEUから離脱することになると、ユーロ圏の求心力は大きく低下する。その場合、ユーロの信認は大きく低下し、売り圧力は強まるだろう。その動きが進むことは、ユーロの崩壊につながるとも考えられる。

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