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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

スポーツ好きのための専門チャンネル、臨場感ハンパない!あらゆるスポーツのライブ見放題

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本社入口に設置されたJ SPORTSの中継放送

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 盛夏が近づくこの時季は、外の気温だけでなくスポーツ放送も過熱する。特に今年はビッグイベントも多い。サッカーでは欧州選手権フランス大会(UEFA EURO 2016)が終盤を迎えており、8月5日には日本中の話題となるであろうリオデジャネイロオリンピックが始まる。

 スポーツ放送だけの市場データはないが、放送市場全体では3兆9307億円(総務省)の巨大市場で、地上波やBS放送、CS放送と多チャンネルで視聴者獲得を競う。歴史と伝統のあるNHKだけでなく、競合各社も独自性を打ち出している。

 今回は、衛生基幹放送のスポーツ専門局である「J SPORTS」に焦点を当て、同社の活動を通じて業界を分析してみたい。

低迷時代からラグビーを深掘り

 多くの視聴者が熱心に見るオリンピックやサッカー・ワールドカップ(W杯)といった人気コンテンツは、放映権料も高騰する。欧州サッカーや米大リーグもそうだ。日本のプロ野球は、近年は球団自らが映像などのコンテンツ制作の主導権を握るケースもある。そのため各放送局は、人気コンテンツの獲得を競い合う一方で独自のコンテンツ育成も行う。

 J SPORTSが行ってきたのが、注目度が低い競技の掘り起こしと育成で、その代表例がラグビーだ。高校ラグビーや大学ラグビーから南半球や北半球の世界最高峰の試合まで、多くの試合を紹介してきた。ラグビーW杯も1999年の大会以来、5大会連続で放送している。

 2015年W杯でブームを巻き起こしたラグビー日本代表の快進撃。その始まりとなった日本代表対南アフリカ代表戦における、J SPORTSのライブ放送(生中継)が話題となった。

 試合終了間際の日本代表の攻撃シーンで、矢野武アナウンサーが「スクラム組もうぜ」と実況した。相手の反則で日本がプレーの選択権を得た場面で、入れば同点となるペナルティゴール(PG)ではなく、逆転トライをめざすスクラム選択を呼びかけたのだ。

 実際に日本はスクラムを選択し、その後の波状攻撃から逆転トライを挙げて世界ランク3位の南アフリカに歴史的な勝利を収めたのはご存じのとおりだ。実はこの場面、J SPORTSにおけるスポーツ中継の基本原則ではない実況放送だった。

「有料放送である当社の番組の視聴者は、競技をそれなりに理解している人が多いので、実況は第三者として必要最低限の情報を伝える。それが基本ですが、日本代表戦のような試合は視聴者を引き込み、選手と一体感を持たせる役割もあります。南アフリカ戦は劇的な勝利も手伝い、その一体感ができた放送でした」(J SPORTS編成部長・亀井宣晃氏)