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金森努「マーケで斬る」

過去最大赤字の大塚家具の「深刻な問題」…絶好調ニトリの真似はできない苦悩

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「路線変更」には時間がかかる


 いわゆるマーケティングの「4P」で考えるなら、Product(商品・品揃え)は高級品から中級品に変更、Price(価格)はそれにともなって中価格に変更した。だが、売上を維持するなら客数を増やさなければならないが、Place(販路・立地)はそのままだ。顧客側はまとめ買いのためなら遠い店舗にまで足を運ぶが、単品を買うためだけに遠くまで行きたくない。

 つまり、「中価格帯中心への路線変更」のうち、手を入れやすいProduct(商品・品揃え)とPrice(価格)は計画変更されているかもしれないが、本来それと連動し整合しなければならないPlace(販路・立地)はそのままなのが大きな問題だ。しかし、広すぎる商圏を顧客が来店しやすいように縮小して店舗数を増し再配置するということは、かなり難易度が高く、実行するにも時間がかかるだろう。

顧客フォローこそが真の解決策だ


「自分らしいライフスタイルに向けて、少しずつ買い足す単品需要」を取り込むためには、ニトリと同じ土俵に登らないことが肝要だ。久美子社長は従来のマンツーマンの接客を過剰として否定し、顧客が自ら見て回れるスタイルに改めた。

 では、営業担当者は何をやればいいのか。それは「既存顧客のフォロー」だ。たとえば、主婦が買い物のついでにキッチン用品を買うようなニトリの店舗展開と品揃えは大塚家具には真似できないし、「中価格帯狙い」なら真似すべきではない。それならば、顧客に来店を促す必要がある。

 たとえば、購入した家具のメンテナンスや椅子の座面張り替えなどの案内をする一方、買い増し需要はないかお伺いをする。「3カ年の中期経営計画」の市場分析にあるとおり、「まとめ買い」をしなくなっている今日、ライフスタイルやライフステージの変化によって、顧客に「買い増し需要」も存在するはずだ。また、大塚家具は家具の「下取りサービス」も発表しているので、買い換えの促進も可能だろう。

 ところが、ここに大きな問題がある。大塚家具は既存顧客のフォローを個々の営業担当者に任せており、アプローチをするもしないも、担当者個人の考え方次第なのだ。大塚家具で家具を購入した経験のある顧客に、DMや電話その他の手段で購入後になんらかのアプローチがあったかを聞くと、かなりのバラツキがある。それは、同社の全社統一施策として計画的に徹底して行われていないからにほかならない。同社の復活のカギは、まずはここにあると考えられる。
(文=金森努/金森マーケティング事務所取締役、マーケティングコンサルタント)

●金森努(かなもり・つとむ )
有限会社金森マーケティング事務所取締役・マーケティングコンサルタント。グロービス経営大学院客員准教授(マーケティング・経営戦略)、青山学院大学経済学部非常勤講師(ベンチャービジネスとマーケティング)兼務。東洋大学経営法学科卒。大学でマーケティングに触れ、大手コールセンターに入社。顧客の「顧客の生の声」から、「この人はナゼ、こんなコトを聞いてくるんだろう」「ナゼ、こんなモノを買うんだろう」など、消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングの世界に踏み込む。その後、コンサルティング会社や広告代理店を経て、2005年に独立。マーケティング一筋四半世紀以上を過ごす。新商品の上市計画や売れない商品の復活プラン策定などを得意とする。コンサルの現場・教育・執筆では、一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
    
著書:『図解 よくわかるこれからのマーケティング』(同文舘出版)
『“いま”をつかむマーケティング』(アニモ出版)
共著書:『ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本』(TAC出版) 等
   
・Contact → kanamori-kmo@nifty.com