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小林製薬、便利すぎる新ヒット商品を連発し続ける破天荒経営

文=沼田利明/マーケティングコンサルタント
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小林製薬、便利すぎる新ヒット商品を連発し続ける破天荒経営の画像1「熱さまシート」(「小林製薬 HP」より)

 小林製薬は、2016年3月期の連結売上高が前年同期比6.9%増の1372億1100万円、営業利益は同1.9%増の182億6000万円と好調で、18期連続の増益かつ過去最高益を達成した。

 小林製薬といえば、ユニークな名前の商品の数々で有名だ。洗眼薬「アイボン」、口中清涼剤「ブレスケア」、おりものシート「サラサーティ」、額用冷却シート「熱さまシート」、タンククリーナー「ブルーレット」、芳香・消臭剤「消臭元」などは、国内ナンバー1のシェアを誇るブランドとなっている。その人気の理由のひとつに、覚えやすいネーミングがあるのは間違いない。

 同社は1886年に化粧品・雑貨の店、小林盛大堂として創業、1894年に自家製薬品を発売している。この時に発売されたのは「大効丸」「一日丸」など、何に効く薬か名前だけでは判断できない商品もあるが、「タムシチンキ」という、いかにも「水虫・タムシの治療薬です」とわかる薬もある。

 だが、1939年頭痛薬『ハッキリ』を発売した頃から、ネーミングに現在にも通じる小林製薬“らしさ”が現れ始めている。

 小林製薬のネーミングには、いくつかのパターンがある。

【だじゃれ系】
・頭痛薬「ズッキノン」
・不眠症薬「ナイトミン」
・脂肪の分解・燃焼を促す「ナイシトール」
・かかと用保湿剤「なめらかかと」

【用途表現系】
・排水口用髪の毛除去シート「髪の毛集めてポイ」
・扁桃炎・扁桃周囲炎治療薬「のどぬ~る ガラゴック」
・レンジ洗浄布「チン!してふくだけ」
・ポット洗浄剤「ポット洗浄中」

【効用表現系】
・液体絆創膏「サカムケア」
・腋に塗る制汗剤「ワキガード」
・肩こり用の内服薬「コリホグス」
・ガスだまり改善薬「ガスピタン」

 ちなみに、ネーミングについては特にルールがあるわけではないという。製品の用途、効用を表すのにわかりやすい製品名をつけるため、さまざまなアイディアを募り、その中から決める。

 だが、海外販売においては、ユニークな命名は鳴りを潜めている。小林製薬は、1998年に米国に子会社を設立、同年上海で合弁会社を設立したことに始まり、現在では米国、英国、中国、東南アジアなど世界約40カ国以上で販売している。それらの国々では、考え方も風習も異なるため、とにかく「わかりやすい」ことが求められる。

 たとえば、世界への販売で中心となっているのは「熱さまシート」だが、発熱時に頭を冷やすという習慣がないという国が多い。そのため、おでこを冷やすことで楽になるという効能を啓発することにも注力しつつ、おでこにシートを貼るだけで冷感を得られるとアピールするといった具合だ。

ユニークな社内制度で新製品のアイディア続出

 小林製薬の製品開発の方向性が大きく変わるきっかけとなったのは、現会長の小林一雅氏が社長時代、アメリカ旅行中に見つけたトイレの芳香剤だという。当時、まだ日本では芳香剤は普及しておらず、「日本にもあるといいな」と思ったという。そこで、日本に帰って「ブルーレットおくだけ」を開発したところ、大ヒットした。

 それ以来、小林製薬は「あったらいいなをカタチにする」が会社のコンセプトとなった。同社が新製品を開発するときには、すでに大手メーカーが製品を出している市場で勝負するのではなく、自社で新たな市場を開拓して先行者利益を得ようというスタイルが確立されている。実際に、同社製品は発売時に競合がいない新しいものばかりだ。

 目新しく画期的な商品を次々と世に送り出すことで、創業130年たっても大きく成長を続けているのだ。だが、市場に出ていない新製品をつくるというのは簡単なことではない。

 そもそも、新製品のアイディアを集めなくてはならない。そして、そのアイディアをカタチにするためには新たな手法を編み出さなくてはならないことも多い。

 実は、小林製薬には「全社員提案制度」というユニークな制度がある。社員一人ひとりが商品のアイディアや社内改善などを積極的に提案する。なかには、月10件以上のアイディアを出す社員もおり、会社全体では年間約3万件にも上る提案があるという。

 これらの提案を元に開発が進められることも多く、提案件数や提案内容に応じてポイントが与えられ、年に一度ポイント獲得上位者を集めて社長や会長を囲んでの夕食会が催される。そこで、高い問題意識を持った日ごろの取り組み姿勢に対して、社長からねぎらいの言葉が贈られる。

 小林製薬は、社長をはじめとして全社員がお互いを「さん付け」で呼び合う。また、社長自ら、社内で賞賛すべきと感じた従業員に対して「ホメホメメール」を送り、その仕事ぶりを称えるという。社員は、会社への貢献や仕事ぶりがイントラネットなどで称えられ、表彰されることもある。

 このように、自由な風紀と会社に寄与した社員は報奨を受けるという制度により、製品開発を行う社員だけではなく、全社員が生活者として、顧客としての目線で「あったらいいな」と思う製品を普段の生活の中で探している。だからこそ、小林製薬は新しい製品を次々に生み出せるのだ。
(文=沼田利明/マーケティングコンサルタント)

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