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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

絶望と希望の「親の介護」、従業員と企業のトラブル激増…悲劇的事態はこう回避できる

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ®代表、保険・介護・医療ジャーナリスト

 それだけでも企業にとって大問題だが、介護休業が長期化すれば状況は更に難しくなる。たとえば、父親のために取得した介護休業期間が満了した後、同じ従業員が続けて母親のために介護休業を必要とするといった場合のように、介護休業が度重なって長期化することがある。

 介護休業が長期化した場合の問題は、育児休業の長期化による問題と共通し、従業員本人が元のペースをつかむまで時間を要するといった点にとどまらず、長期にわたる介護休業中にすっかり変化してしまった職場環境への適応が必要という点にまで拡大する。場合によっては、元の部署が吸収合併して消滅していることもあるだろう。理解してくれていた上司や先輩が転勤・転部で、知った顔が誰もいないというケースも考えられる。たとえこうした劇的な変化が無い場合でも、職場は日々少しずつ変化していくものであり、長期間休業した従業員は大きく変わった職場環境に適応しなければならないことになる。こうした職場環境の変化への対応は、従業員にとって非常に大きな壁になるだろう。

 特に頭が痛いのは、介護休業中、人員を増やさずに、従業員の業務をほかの従業員だけで分担してこなしていた場合だ。こうなると、一人ひとりの業務効率は、従業員が介護休業に入る前とは比較にならないほどスピードアップしている。最悪、同じポストにその従業員の居場所がないという問題も降りかかる。だからといって、安易にその従業員を異動させれば「不利益な配置の変更」であるとして違法な不利益取扱いに当たるとされるリスクがある。それならばとほかの従業員で調整しようとすれば、会社が復職する従業員ばかりを重視しているといったほかの従業員たちの不満が高まりかねない。

「企業は、介護休業前から介護休業中も復職後も、従業員と定期的な面談を重ね、コミュニケーションを欠かさないようにすることが重要だ。緊密なコミュニケーションをとることが、介護問題へのきめ細やかな対応を可能にし、介護トラブルを最小限にする方策のひとつといえる。従業員にとっても、職場との心理的な壁ができにくくなり、介護休業等の長期化による問題を減らす効果も期待できる。企業側は、介護を抱える従業員だけでなく、ほかの従業員の本音も聞き出して調整を図るなど、ほかの従業員のケアも怠ってはならない」(鈴木氏)

王道の防衛法とは?

 こうした現実があるなかで、経営体力の弱い中小企業では、どのように防衛策をとればいいのか。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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