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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

ソフトバンク、深刻な経営危機的状況…巨額現金流出超過、大型買収が失敗

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

問題1:13年度の大型投資のあと、営業CFがあまり伸びていない

 
 営業CFは、「当年度におけるお金を稼ぐための活動」によって稼いだお金のことです。一方、投資CFは「将来のお金を稼ぐための活動」のことです。ソフトバンクGは11年度頃までは、投資活動で2500億円~3700億円程度の支出を行っていましたが、12年度には8741億円と投資の支出額を拡大させています。実に従来の3倍程度の水準です。

 そのうえ、13年度には2兆7181億円にまで投資CFを大きく拡大させました。これらの大きな投資CFのマイナスは、「将来のお金を稼ぐための活動」です。したがって、これほどの投資活動を行ったからには、それ以降の事業年度の営業CFも大きく拡大しないといけません。

 ところが、その営業CFはあまり増えていません。そもそもソフトバンクGの営業CFは、10年度が8258億円、11年度が7402億円でしたが、投資規模を3倍程度に拡大させた12年度、13年度の営業CFは、それぞれ8741億円、8602億円と微増です。
 
 さらに、2兆7181億円もの巨額投資が行われたあとの14年度には、いくらか営業CFが増加したものの1兆1551億円であり、その翌年度の15年度には9401億円に減少してしまったのです。つまり、2兆円を超える空前の巨額投資を行ったにもかかわらず、7000~8000億円規模であった営業CFの水準が9000億円程度の水準で伸び悩んでいるのです。察するに、12~13年度における大掛かりな投資活動は、現在のところ決して成功しているとはいい難いのです。

問題2:営業CFと投資CFの大小関係が逆転してしまった

 2つ目の問題は、12年度以降、投資CFのマイナスが営業CFを上回るようになってしまったことです。たとえば、08年度は営業CFが4478億円であって投資CFのマイナスは2662億円で、営業CFが投資CFのマイナスよりも大きな金額になっています。
 
 これらを合わせると、1816億円(=4478億円-2662億円)のプラスになります。これを「事業活動のCF」といいます。この1816億円は、正味事業活動によって会社が増やすことのできたお金です。ソフトバンクGでは、これを配当金の支払いの財源にしたり借金の返済に充てたりします。

 前出のグラフをみれば、08年度のあと11年度までは営業CFのプラスが投資CFのマイナスを上回っており、事業活動でお金を増やしていることがわかります。

 ところが、投資を拡大させた11年度以降は、投資CFのマイナスが営業CFのプラスを上回り、事業活動によるCFがマイナスになってしまいました。このように、事業活動によるCFがマイナスになってしまうと、これを財源とした配当金の支払いや借入金の返済ができなくなります。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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