ビジネスジャーナル > ライフニュース > 要介護になる老人は●●が不足?  > 2ページ目
NEW
熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

要介護になる老人、共通して●●が不足していた?

文=熊谷修/人間総合科学大学教授

 量反応性とは、わずかな数値の差でも、表出する変化に違いがみられることをいう。なお、血清アルブミンの詳細については次稿で解説する。

 地域の元気なシニア約350名の協力のもと行った8年間の縦断研究である。初回調査で採血し血清アルブミンを測定して、値の高くたんぱく質栄養の良いグループ(4.3g/dL以上)、中位グループ(4.2~4.1g/dL)、低いグループ(4.0~3.8g/dL)に分け、その後8年間の各グループの最大歩行速度が低下する程度を比較した。

 その結果、たんぱく質栄養の良いグループに比べ、低いグループは約40%最大歩行速度の低下量が大きいことが明らかになり、中位グループはその中間の20%程度の低下量であった。血清アルブミンと最大歩行速度の低下の関係は直線的なこともはっきりした。たんぱく質栄養の良いシニアほど老化の速度が遅く抑えられ、足腰の衰えがわずかで済んでいることを示している。

 この関係は、運動習慣があるかないか、年齢は何歳か、あるいは太っているか否かなど他にも関係している項目の影響を加味酌量しても、変わらない明瞭なものだった。たんぱく質栄養が良好なシニアほど、体の虚弱化が予防され要介護リスクが低いのである。

 この縦断研究で示された老化とたんぱく質栄養の関係は、その後アムステルダム在住のシニア集団の研究でも確認され、現在では国際的な共通認識となっている。最近、健康食品の広告で「たんぱく質」という栄養用語を目にすることが多くなった。筆者にとっては遅ればせながらの感は否めないが、よい潮流である。
(文=熊谷修/人間総合科学大学教授)

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

要介護になる老人、共通して●●が不足していた?のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!