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「本屋なんか必要ない…」ある書店を襲った壊滅的悲劇と奇跡…天井剥がれ大量の本が水浸し

文=諸山誠/図書新聞
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 水害が深刻な売場は、正面入口から突き当たりを左に曲がった奥の「まるぶんトラベルコーナー」のある、ごく一部だった。天井板が剥がれているのもその周辺。カッパ像の入口から突き当たりの児童書売場まで、2階の学習参考書(学参)・コミック売場のすべてに、大きなダメージは見受けられない。すぐにもこの一部だけで営業再開が可能に思えた。

「什器やレジ、パソコンなど機器類には問題ありません。1カ月たって、この通り、電気もつくようになりました。建物にひび割れはありますが、専門家は“化粧が落ちただけ”で、建物自体に問題はないと、お墨付きをもらっています。熊日(熊本日日新聞)さんから取材を受けたときも、8月頃にはオープンできると責任者は話していました。問題は水回りです。早く工事を済ませてほしいと思うのですが、復旧工事が立て込んでいて、なかなかこちらにまで回ってこないようです」

 同店の荒川俊介店長がそう答えてくれてから数週間後、同店は今年10月を目標に営業再開に向けて動きだした。取材時は、「遅ければ、年末までかかるかもしれない」と不安げに話していたが、「再開の目処がついて安心しています。再開するからには以前よりもいい店にして、お客様に喜んでいただけるようになりたいです」と語る。

 荒川店長は店舗休業後、熊本県庁前にある金龍堂外商部で、市役所などまるぶん店の外商先との仕事をこなす傍ら、他店への応援、まるぶん店の返品不能品の処理に追われている。そのため、荒川店長の“本屋の記憶”は地震の時に止まったまま。「本屋大賞をとった『羊と鋼の森』はどうなっていますか?」「『おそ松さん』は?」と矢継ぎ早に質問し、「ずっと本に触っていなくて、新刊が全然、わからないんです」と嘆く。

 そんな荒川店長にあえて、「建物も売場もこれだけ無事で、待ってくれている客もいる。なぜ一部分でも営業再開しないのか」と投げかける。「今からでもやりたいですよ。すぐに店をきれいにして、出版社に送品依頼を出したいんです。上司にもそう伝えたのですが、まだ余震も強かったので、お客様に危険が及ぶということで、許可は出ませんでした。それに再開して赤字では意味がない。かといって、再開が遅れるとお客様が離れるというデメリットも承知しています」

 シャッターの張り紙は、どんどん増えている。まるぶん店の「休業のお知らせ」の横には、「復活 まるぶん」と大きく書かれたB4用紙が張られ、再開を願うメッセージが寄せられている。その横には折り鶴が6羽、ぶら下がっていた。

「本屋なんか必要ない…」ある書店を襲った壊滅的悲劇と奇跡…天井剥がれ大量の本が水浸しの画像2金龍堂まるぶん店の張り紙に寄せられたメッセージ

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