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「本屋なんか必要ない…」ある書店を襲った壊滅的悲劇と奇跡…天井剥がれ大量の本が水浸し

文=諸山誠/図書新聞
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「本屋なんか必要ない…」ある書店を襲った壊滅的悲劇と奇跡…天井剥がれ大量の本が水浸しの画像3長崎書店の店舗前のワゴン販売

「おそらく遠方から来ているお客様だと思うのですが、NHKのあるテキストを切らしてしまっていて、『代金を支払っておくので入荷したら宅配してください』とおっしゃるんです。最近はそのような要望が増えています。市内の方もいますが、阿蘇や菊地などの方もいます。今は、そうやって遠方から来てくださった方の求めに、きちんと品揃えで対応できるようにしたいです」(同)

 取材時の6月9日、長崎書店は営業時間を午前10時半~午後7時(13日から通常時の午前10時~午後9時に戻った)に短縮した程度で、店舗運営は平常時を取り戻しているようにみえた。

 同店の前、アーケード通りの中央付近では、震災関連本を集めたワゴン販売も始まっていた。熊本の震災復興のためにという上通商栄会の企画で、長崎書店以外の店舗も出張販売している。

 そこで売れている3冊の本が、『緊急出版 特別報道写真集 平成28年熊本地震』(熊日出版)、『安全・快適 車中泊マニュアル』(地球丸)、『アサヒグラフ 九州・熊本大地震 活断層の恐怖』(朝日新聞出版)だという。ちなみに、ワゴン販売では、手紙の書き方や国土地理院の活断層図、熊本城の写真集、防災マニュアルなどの書籍や雑誌も販売していた。

「『車中泊マニュアル』は熊本地震の情報を載せたうえで刊行され、熊日にも記事が載りました。それで売れているのだと思いますが、一方でまだ車中泊をしている人がいるのかと思い知りました。同じ熊本にいながら、意識の差というのはあります」(同)

 写真集については、地震のときに世話になった親戚や知人などに配るために、5冊、10冊とまとめ買いする客が多かったという。取材中に、ワゴンにある2冊の写真集を見つめていた年配の女性がいた。表紙を凝視しながら、「あれ以来、辛くて悲しくて、新聞もみていなかった」と独り言ちた。だが、1冊の写真集を購入していった。理由は聞いていない。ただ、東日本大震災の被災者と同じように、その人が前に進むための“一歩”だったと受け止めた。

【橙書店】

 上通と対をなす、もうひとつのアーケード商店街・下通の一角に、隠れ家的に佇むのが橙書店である。熊本県内外の知識人やメディア関係者などが集う、書店兼喫茶店兼雑貨屋兼ギャラリーとして知られる同店は、取材時の6月10日には通常通りオープンしていた。熊本の評論家・渡辺京二氏と文芸誌「アルテリ」を発刊するほか、熊本文学隊のイベントにも携わる店主の田尻久子さんは、震災から約2カ月後の心境を次のように分析する。

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