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「本屋なんか必要ない…」ある書店を襲った壊滅的悲劇と奇跡…天井剥がれ大量の本が水浸し

文=諸山誠/図書新聞
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「私たちは運が良くて、2次被害的なものがほとんどありませんでした。東北(東日本大震災)や益城町のことが頭にありますから、あちらに比べて私たちは大丈夫だったので、我慢してしまう。でも、あれだけ怖い思いを押し殺していますので、そろそろ疲弊してストレスが出てくる頃ではないでしょうか。私も地震直後からずっと休んでおりませんので、今は地震直後よりもきついです」

 14日の前震のときは店内にいた。棚から食器がなだれ落ちてきた。本も雑貨も散乱した。地震の揺れで下がった軒のせいで、喫茶スペースのドアは開かなくなった。以前から雨漏りしていた天井の一部が落ちてきた。

 ひとりだけ残っていた客を外に避難させ、客にも田尻さんにも怪我はなかった。その日は帰宅したものの、一睡もできなかった。15日の朝に店に戻り、散乱した食器の破片や本などを片付けた。夜遅くまで作業して、疲労した体をベッドに預けているときに16日の本震に遭遇した。家から出て、その日は野宿することに。朝になっても気が動転して動けなかったが、昼頃に店舗へ向かった。

「あまりにもぐちゃぐちゃだったので、その日は片付ける気力もありませんでした。通電火災が怖いので、ブレーカーを落とし、冷蔵庫の食料を持って、避難先の友人宅に戻りました。そのため、喫茶スペースの床下はガラスの破片まみれで、そこを通って本屋にも行くものだから、そっちもガラスまみれになってしまって」(田尻さん)

 女性ひとりで余震が続くなか、片付け作業をするのも、相当な身心的疲労を伴ったと思われるが、「津波で泥まみれになることを考えると、全然楽ですよね」とまた我慢を重ねる。

 本格的に片付け始めたのは4月18日以降、「震災ハイなのかわかりませんが、2~3日はひたすら片付けに没頭していました」という。先に店を開けたのは向かって左手にある本屋スペース。本を売るというよりも、皆が話せる場を設けたかったからだという。

「県内の常連客が来て、後片付けを手伝ってくれました。県外の方からも連絡をいただきましたが、余震があって危険ですので、と断りました。色々な方が来てくれましたが、やはり話をしたいのでしょうね。気が張り詰めていた状態でしたから。店に入っていきなり泣きだす女性もいらっしゃいました」(田尻さん)

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