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5千人のアイドルたちが「アイドル」という枠組みを破壊し始めている…日本の新しい教養

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WHY@DOLLの浦谷はるな(左)と青木千春(右)
 それは、本当にサプライズだった。2人組アイドルグループWHY@DOLL(以下、ホワイドール)のワンマンライブ(7月16日、代官山UNIT)の終劇近く、彼女たちにも知らされていなかった「重大発表」が明かされた。


 アイドルのCDリリースなどで著名なレコードレーベル・T-Palette Records(以下、Tパレ)に移籍することであり、舞台にはタワーレコードの代表取締役社長である嶺脇育夫氏が登場した。観客たちは、どよめきながらも、この移籍を祝福しているように筆者には思えた。

 日本には、約5000人の女性アイドルがいるといわれている。他方で、アイドル業界は移り変わりがとても激しい。中堅どころの人気アイドルでさえ、電撃的に解散するのは珍しいことではない。筆者は、今年2月に『ご当地アイドルの経済学』(イースト・プレス)を刊行したが、同書に記載されたアイドルたちの何人かは、もう業界にはいない。アイドルがCDのレーベルを替え、または所属事務所を移るというのは、頻繁に観察できるエピソードだ。

 今の日本のアイドル市場は、本当に厳しい世界といえる。ホワイドールは、青木千春(ちはるん/23歳)、浦谷はるな(はーちゃん/21歳)の2人組。ともに北海道札幌市出身で、2011年に結成され、13年の秋から東京に拠点を移している。

 ビジュアル的にとても可憐で、また歌唱力とパフォーマンスには特に高い評価を得ている。例えば、ファンの人気投票で競い合う人気番組『アイドルお宝くじ』(テレビ朝日系)では、多くの注目アイドルが落選していくなかで5週にわたって勝ち残った。

 また、真夏のアイドルの祭典として国際的にも有名な「TOKYO IDOL FESTIVAL」には、今年で3年連続の出演を決めている。フェアに見れば、アイドルの世界に少しでも詳しい人なら、その名前を知っている中堅アイドルグループといっていいだろう。

 ホワイドールは、「オーガニックガールズユニット」を自称している。「オーガニック(有機的)」という形容どおり、彼女たちの素直な個性――正真正銘の天然・ちはるんと、機転の利く突っ込み担当のはーちゃんのMC(ライブ中のトーク)――は、彼女たちの歌唱とともに聴く者を楽しく、また癒やしてくれる。まさに、彼女たちのライブは都会の憩いといっていいだろう。

 ちなみに、彼女たちのグループ名には元ローカルアイドルらしい由来がある。ホワイドールの「WHY」は、北海道の雪のイメージの「white」をもじったものであると同時に、彼女たちの拠点だった札幌市白石区の「白」でもある。

 そして「@」は、やはり白石区を拠点としているという「場所」を指すと同時に、ファンとのアットホームな関係を大切にしたいという意味の「アット」でもある。また、最後の「DOLL」はアイドルからきている。幾層にも意味が重なった複雑な味わい、これは彼女たち自身も、まだすべては気がついていない面でもある。

 筆者の主観と経験からいうと、ホワイドールはアイドルの世界にまだ触れたことがない人の入門として、そして、昔アイドルに関心があったが今は距離を置いている人の再入門として、最適な入り口になっている。