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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(11月第5週)

すでに本屋ではない! Amazonで一番売れてるのはお米!?

東洋経済、週刊ダイヤモンド(左)「週刊東洋経済」(12/1号)
(右)「週刊ダイヤモンド」(同)
「週刊ダイヤモンド 12/1号」の特集は『今、入るべき会社 就活親子の大誤解』だ。2014年春入社を目指す大学3年生(大学院修士1年生)の就職活動(就活)が12月1日から本格化する。2011年、それまで10月スタートだった“解禁”の時期を、経団連が倫理憲章を見直し、2カ月遅れの12月スタートに変更した。今年もこのスケジュールを踏襲したために、大手企業の採用説明会が短期間に集中するのだ。

 内定までは半年前後の短期決戦となるため、事前の情報収集が運命を左右する。イメージに流され、誤った情報に翻弄されがちな就活生のために、人気企業・業界の実情を徹底解明した特集だ。

●『10年後日本人が食える仕事』の二番煎じ感がただようダイヤモンド

 とはいっても、記事を読む限り、各業界の基本的な情報を網羅しているのみ。 『電機・自動車 “地獄”の家電と“天国”の重電 トヨタの不安定要素はEV』という記事では、パナソニック、シャープ、ソニーの家電メーカーは業績悪化で目もあてられない一方で、日立製作所、東芝、三菱電機といった重電メーカーは事業の選択と集中の結果、筋肉質な経営体制に生まれ変わっているという事実を紹介している。

 ただし、重電メーカーでも中核事業以外は縮小・撤退リスクがあるため、要注意だ。

『金融・商社 国債と資源依存に潜むリスク 高収益企業の本当の実力と内情』という記事では、製造業の地盤沈下を尻目に、高収益をたたき出し、わが世の春を謳歌している銀行と商社のリスクを紹介している。銀行は今後、国際業務が主軸になるために外国語や高いコミュニケーション能力が求められる。商社では、資源依存度が最も高い三井物産は資源価格暴落リスクが、積極投資を進めている伊藤忠商事は資産リスクがあるという。

『SNS・IT 新卒に“破格”の高額年収も 『一寸先は闇』の苛烈な業界事情』という記事では、日本で唯一といってもいい驚異的な伸びを続けるソーシャルゲーム業界では、新卒エンジニアでも1000万円超を提示する特別枠が用意されているという。ただし、高額年収はエンジニア採用だけで、既存部門の社員の年収は頭打ちだ。

 ……といった基本情報が続く。ダイヤモンド編集部がよく陥る「取材記者の特集への興味のなさが誌面に反映された」パターンだ。読者が知りたいポイントをつめきれず、表面的に聞いた情報だけを掲載してしまうのだ。

 なかでもひどいのが、『平凡的な学歴でも伸びる職種でキャリアアップ 人気職種の勘違い』という40職種サバイバルマップだ。伸びる職種と沈む職種が「勝ち残り組」と「しばし安泰」「将来先細り」「絶滅危惧」に分けて、紹介されているのだが、編集のなかに本来しておくべき業種と職種の区別ができていないのだ。

 たとえば、業種は「医師」、「自衛官」、「ケアマネジャー」などという分類であり、職種とは企業経理、企業広報といった社内で「部」で表される分類のことだ。編集部がこの区別をしていないので、「公務員」「薬剤師」と「企業人事」が「しばし安泰」エリアに位置していたりする。しかも、「公務員」のほかに「中央官僚」という職種も書かれていて、意味のわからないマップになっている。  

 また、取材も足りない。40職種サバイバルマップでは「公認会計士」は急増して職にあぶれる人が出ているために「将来先細り」エリアにあるが、「税理士」は「しばし安泰」と「勝ち残り組」の中間に位置しており将来安泰のように見える。しかし、現実には「公認会計士」は2万人程度だが、「税理士」は7万人で、先に職にあぶれているのは「税理士」のほうなのだ。本来であれば、同位置になければならない。顧問料が月1万円時代になっているこういった厳しい情報が編集部に入っていないようだ。

「肉体的にはどんどん疲弊していくが異業種で通用するスキルがまったくといっていいほど磨けないのだ。『本を読む時間はないし、年々頭を使う機会が減っている。脳が筋肉になっていくようだ』と打ち明けたのは30代の毎日新聞記者」という紹介が書かれているのは「マスコミ(記者)」の紹介ページだ。「今後、深い分析記事や独自視点の記事が書けない記者は真っ先に淘汰されることになるだろう」とも書いているのだが、今回の特集自体が、最近のヒットとなったライバル誌「週刊東洋経済 8/27号」の特集『10年後に食える仕事食えない仕事』(今年に入って書籍化もされた)の二番煎じ感がただよう特集だ。「マスコミ(記者)」の紹介ページで自分たちの本音が思わず、吐露したのかもしれないが、まずは、自らの独自視点を磨くことが必要ではないだろうか。

●法人税逃れ企業アマゾンジャパンに迫れたか!?

「週刊東洋経済 12/1号」の特集は『新流通モンスター アマゾン』だ。

 11月19日、とうとう日本でもAmazonの電子書籍専用端末「Kindle Paperwhite(キンドル ペーパーホワイト)」がネット上で発売された。価格は7980円と原価トントンの安さで5万点の中から作品が購入できる。今予約しても、13年の年明けにならないと手に入らないほどの人気ぶり。そのAmazonの全貌に迫った企画だ。

「Amazon、Apple、Googleに日本の産業界が支配されちゃったら嫌でしょ?」と冗談交じりに漏らすのは、講談社の野間省伸社長。出版業界への影響は大きい。すでにAmazonは日本最大の書店になっている。売上高ランキングでは、3位・TSUTAYA BOOKS・1047億円、2位・紀伊國屋書店・1098億円、1位・Amazon・1920億円と、なんと業界最大手の紀伊國屋書店の2倍の規模なのだ。Amazonが電子書籍の大安売りを始めたら、紙の本が激減しかねない……出版業界はAmazonを中心にサバイバルが繰り広げられている。  

 本のネット通販から始まったAmazonだが、今や日用品や家電、ファッションなど次々と品目を拡大。重くて運ぶのが面倒な米やペットボトルを定期便で買う主婦も多い。扱う商品は国内だけで5000万種類を超えるほどだ。

 しかし、品揃えだけではない。価格が実店舗より安いのは当たり前。配送無料や当日配送も先駆けて取り入れる、顧客主義も貫いている。Amazonのサイトには、世界で3.6億人以上のユーザーが、最低月1度は訪問。日本でも4800万人が訪れている。実は、本以外の売上がすでに6割。2011年の売上高481億ドルのうち、書籍、CD、DVDの売上は178億ドル(37%)だが、家電、日用品など287億ドル(59.7%)になっているのだ。

 米国発の巨大企業の参入に出版業界だけではなく、既存業界の反発も大きい。たとえば、Kindleについては家電量販店でも売り出すはずだったが、ヤマダ電機などが販売を拒否している。店頭で商品をチェックし、ネットで買う消費者が増え、実店舗はショールームと化している現実があるからだ。家電業界の警戒心がAmazon外しにつながっている。

 日本でAmazonのライバルとされる楽天は取扱高1兆円超だが、楽天は出店企業がサイトへ個々に出店、楽天市場はその場所代(出店料)で成り立つ「モール(商店街)型」だ。このため、出店企業に在庫管理、配送などを任せている。

 一方でAmazonは、自社で在庫を持ち、顧客に届くまでのプロセスすべてを管理している「直販」型が特徴だ。多くの顧客を味方につけた場合、企業側に強気な価格交渉も可能になるのだ。ただし、顧客へのサービス提供を持続するための投資が、常に必要になってくる。同社の物流拠点は世界で69カ所を超える。IT関連費用は年間約29億ドル。11年12月期の売上高は481億ドル(約3.9兆円)だが、営業利益率はたった1.8%にすぎない。目先の利益を犠牲にしてでも、徹底的に先行投資をする必要があるのだ。

 日本では事業を開始した00年から07年まで市川FC(フルフィルメントセンター)1カ所だったが、その後、次々と拠点を増設。関西、中部、九州にエリアを拡大。この11月には延べ床面積約8万平方メートル、5階建ての多治見FC(岐阜県多治見市)をオープン。中部地方最大の物流拠点で、サイト上の「在庫あり」表示が増え、中部地方の配送速度が上がる。

 さらに、13年の計画では、神奈川県小田原市に多治見FCの約2.5倍となる約20平方メートルの新FCが登場するという。

 今春には米国Amazonがロボットメーカーのキバ・システムズを7.7億ドルで買収。倉庫をロボットが走り回り、商品を回収する仕組みを実験中だ。「目標はドミノピザの速さ」だという。

 同社が次に狙うのは、「セル・グローバル」という仕組みだ。国際取引で手間がかかる為替や関税までを処理をする。これを利用すれば、海外のどの国の商品でも自由にユーザーが買い物し、出品できるようになる、翻訳が目下の課題だが、「日本への実現の仕組みを構築中」だという(ジャスパー・チャン アマゾンジャパン社長)。

 今回の特集では、ジェフ・ベゾスAmazon創業者・CEOとジャスパー・チャン・アマゾンジャパン社長がインタビューに答えている。ジェフ・ベゾス氏は尊敬する経営者として、ソニー創業者の盛田昭夫氏の名前を挙げ、「盛田さんはソニーの製品にとどまらず日本の製品が高品質であると世界に伝えよう、という大きな使命を持っていた。私は1つの企業のためでなく、より大きな使命感を持っている会社が好きだ(略)私はAmazonを地球上で最も顧客中心の会社にして、多くの組織のロールモデルになりたい」とカッコよく語っている。

 ジャスパー・チャン氏もAmazonへの出品をためらう企業もあるが、「Amazonの役割は出品者に使いやすいプラットフォームを提供して、より出品者に収益をあげてもらうことだ」などとカッコいい。

 ただし、気になったのは国税局とのやりとりだ。

 アマゾンジャパンなど関連会社は、国税局から05年12月期までの3年間で、約140億円の追徴課税を受けている。国税局では、日本での業務責任はアマゾンジャパンなど関連会社が負っているとして課税したが、Amazon側は「アマゾンジャパンなど関連会社とは委託関係にあるだけで、本社機能は米国シアトルのAmazon.com・インターナショナル・セールスであり、米国にだけ納税すればいい」と反論し、その後、日米政府レベルでの協議に持ち越されている。つまり、日本の利益がアメリカに渡っており、日本に法人税を納めていないのだ(地方税などは納められている)。これに対し、ジャスパー・チャン氏は「日本の税制や国際的な税法に従い、払うべき税金は払っていると考えている」と答えている。

 東洋経済の特集では税金に関する記述は全部で10行のみ。このあたりに対するツッコミをもっとしてほしかったが、それは高望みか。ただし、Amazonは日本の経営に関する数字は開示していないことなど、閉鎖的な企業であることはもっとツッコんで書いてよかったのではないか。
(文=松井克明/CFP)

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『週刊 東洋経済 2012年 12/1号』 不敵な笑み。 amazon_associate_logo.jpg
『週刊 ダイヤモンド 2012年 12/1号』 ヤル気無いくらいのが、斜め読みできるかも。 amazon_associate_logo.jpg

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