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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」

トランプ候補に「君たち教育のない人達が僕は好きさ」と言われても平気な米国人の感覚

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ドナルド・トランプ米大統領候補(「Wikipedia」より/Ihardlythinkso)

ポピュリズム」は、その時代や社会状況によって、異なる意味合いを持つ言葉だが、最近では、「大衆迎合主義」とか「衆愚政治」と訳されるように、悪い意味合いで使われることが多い。

 辞書によっても説明が微妙に異なるが、現代用語事典『知恵蔵2015』(朝日新聞社)では、「政治に関して理性的に判断する知的な市民よりも、情緒や感情によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める手法あるいはそうした大衆の基盤に立つ運動をポピュリズムと呼ぶ」と解説されている。さらに、「民主主義は常にポピュリズムに堕する危険性を持つ」として、「そのような場合、問題を単純化し思考や議論を回避することがどのような害悪をもたらすか、国民に語りかけ、考えさせるのがリーダーの役割だ」と続く。

『合理的なのに愚かな戦略』(ルディー和子/日本実業出版社)
 だが、この説明はちょっとおかしい。不確実で不安な時代に、「じっくり考えよ」とか「問題を単純化してはいけない」とか、人間の脳の仕組みとは真逆のことを言っていること自体、危機の時代のリーダーとは思えない。これでは、扇動家の思うつぼだ。

 理性(論理的思考)を重んじるという人たちは、ポピュリズムを煽る扇動家を非難する前に、彼らが使っているコミュニケーション手法を学び、一般大衆を説得できるメッセージを送るようにするべきではないだろうか。

 そこで、大衆を説得できるコミュニケーションの特徴を3つにまとめてみた。

(1)感情に訴える…抽象的表現は避ける。具体化、具象化を心がける
(2)曖昧にしない…黒か白か明確にする
(3)複雑なことを単純化する…シンプルに表現する

 それぞれについて、説明しよう。

具体的表現でイメージを喚起する

(1)の感情に訴えるために必要なのは、抽象的表現ではなく具体的表現を使うことだ。英国の国民投票を例にとれば、残留派リーダーはEUメンバーであることの経済的恩恵を語った。世界に開かれた市場になることがどういった恩恵をもたらすか、多くの数字を並べた。だが、統計数字は抽象的すぎて、暮らしが貧しくなったと具体的に感じている聴衆の感情にはアピールできない。

 それに対して、離脱派をまとめたのは怒りの感情だった。怒りの対象は具体的に頭に浮かべることができた。移民(グローバル化という抽象的概念を具象化している)やEUや英国の政治を支配しているエリート層だ。