NEW

荻野洋一の『ロスト・バケーション』評:86分ワンシチュエーションに宿るアメリカ映画の粋

【この記事のキーワード】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【リアルサウンドより】

 女とサメの一騎打ち。この一見して安直にも思える、なんとも大胆不敵なワンシチュエーションドラマを、よくも作ったものだ。主演はTVシリーズ『ゴシップガール』のセリーナ役でブレイクした正統派美人女優ブレイク・ライブリー。冒頭、ビーチに到着したヒロインのナンシー(ブレイク・ライブリー)が悠々と衣服を脱ぎ、かなりきわどいビキニ姿となった彼女の肢体を、カメラは毛穴が見えるほど舐めるように写していく。通常ならこれはセクシャル・ハラスメントだろう。映画とはじつに因果な商売だ。カメラによるセクシャル・ハラスメントを、「サービスカット」などと称して、撮られる方も嬉々として受け入れる。

 ナンシーはテキサス生まれの医学生で、サーファーである。近所のおじさん、近所のサッカー少年、サーファー男2人組、ただの酔っぱらいなど、数人の脇役をのぞいて、出演者はほぼ一人きり。ガンで若くして死んだ母親(生前は彼女もサーファーだった)がこっそり教えてくれた秘密のビーチ、という設定が最初に示されたため、彼女の孤立無援ぶりは観客もよく分かっており、「これは助けを求めてもムダだ」という絶望感が、客席全体に覆い尽くすだろう。とにかく上映時間86分のうち、ほとんど彼女だけが写っている。そしてこの86分という上映時間の短さがすばらしい。

続きはこちら