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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

黒霧島、いいちこ抜きNo.1に…一点突破戦略で売上7倍、懸念は「飽き飽き感」

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

「今年、年商700億円をうかがい、それを超えて酒造会社としては未踏の1000億円企業を目指す。ただの業界1位に甘んじてはいけない、と社内に言っている。大きく突き抜ける首位、『Through』を目指す」

「突きぬける」、つまり日本酒と焼酎メーカーとしては未踏の領域に登っていく、という意味だが、それには越えなければならない壁がある。

 まず、供給の問題だ。焼酎には各商品で使われる特定の芋種がある。黒霧島で使われる「黄金千貫」は、同社が展開する宮崎県都城市近辺のシラス台地という特有な風土に最適な品種だ。同社は、この地区での芋栽培農家2000軒以上から供給を受けている。しかし、いずれ材料の供給限界に直面してしまい、第5工場の稼動で手一杯となる懸念がある。

 次に、酒類飲料という嗜好品が有する「飽き」、あるいは「ブーム」の問題もある。「皆が飲むから飲む」という段階にまでくると、「皆が飲むから今度は別のものを飲んでみたい」という傾向も生まれる。典型的なのが化粧品だ。焼酎銘柄でシェア20%を超えた黒霧島も、危険な領域に入ってきた。今後15年同じ成長が続くのかと考えれば、その危険は明らかだ。

「黒霧島に続く新製品を続々と発表している、それらはオンリー・ワン商品なので競合なく売れている」

 同社は「赤霧島」「茜霧島」「黒宝霧島」「Ax霧島」などを販売しているが、サブブランドというのはそこそこ売れるが、いくつリリースしてもメインブランドを超えることはなく、また並立するほどの柱にもならない。アサヒビールの「スーパードライ」を想起してもらえればいい。

 黒霧島が直面する上記のような壁は同社にとって成長限界となる危険性がある。江夏氏が掲げている年商1000億円を超えて同社がしっかり「Through」していくためには、新たな戦略の設定が必要だろう。ひとつの方策として、単なる輸出ではない本格的な海外進出が有効だと私は見ている。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

※ 本連載記事が『間違いだらけのビジネス戦略』(クロスメディアパブリッシング/山田修)として発売中です。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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