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田中洋「マーケティングのキーインサイト」

私達が消費する情報の7割はテレビ…「ネットによる情報バクハツ」という幻想

文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授

なぜ情報過剰に悩まないのか

 自分たちの身の回りで、こうした「情報爆発」や「情報過剰」に悩む人を見かけたことがあるでしょうか。自分の周りに情報が多すぎて、それに悩み、神経を病んでしまったという人がまったくいないとは断言できません。しかし、むしろその逆の現象が起こっているように思えます。

 10年に米ペンシルベニア州にあるハリスバーグ科学技術大学で、キャンパス内で1週間学生にソーシャルメディアを禁止するという一種の「実験」が行われました。結果はどうだったでしょうか。68%の学生の答えはポジティブで、このSNS禁止の試みから何かを教えられたとか、発見があったというものでした。

 しかし残りの3割ほどの学生からは「(大学の)宣伝のための売名行為だ」という意見や、何を言っているかわからないような意味不明の反応が多く寄せられました。この実験でもたらされた主な発見は、学生たちが、いかに自分たちがSNSの最新情報をチェックすることで知らないうちにストレスを感じているかを理解した、ということでした。

 ここからわかることは、私たちは情報過剰な状況にあるとしても、SNSやゲームに見られるように、ときには自ら積極的に突っ込んでいくような場合もあるということ。さらに、情報過剰に悩むどころか、むしろ情報過剰の状況への依存すらあるということになります。つまり、私たちは情報が過剰な事態に悩んでいるとはいえないのです。

情報過剰にどう対処しているか

 情報は処理しきれないほど昔から身の回りにあるのですが、実は私たちはそうした状況に対処する術を身につけているために、情報過剰に悩む事態はさほど起こらないのです。

 著名な社会心理学者、ミルグラム教授は情報過剰、ことに都会における無関心さについて考察しています。地方に比べると都会の人は冷たい、親切でない、とよくいわれます。あるとき、米ニューヨークの街中で30分にわたって女性が刺されて殺されるという悲惨な事件が起きました。38人もの人が自分のアパートからその事件を目撃していたにもかかわらず、誰も警察に通報しなかったのです。

 ミルグラムは、都会人は環境から来る情報過多のため、次のような行動をとるようになると考えました。

・自分の役割について、限られたものしか引き受けられない
・他人とかかわらない(人付き合いのルールの変更)
・非日常的な出来事への無反応
・他者からの依頼を選択する(認知プロセスの変化)

 つまり、都会の人間は身の回りにある情報が過多であるために、そこからくるストレスを避けるために、情報をやり過ごしていることになります。

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

京都大学博士(経済学)
日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。
1975~1996 21年間、㈱電通勤務。
1996~1998 城西大学経済学部助教授
1998~2008 法政大学経営学部教授
2003・4年度コロンビア大学ビジネススクール客員研究員
2008~2022 中央大学ビジネススクール教授
2022~ 中央大学名誉教授
元・東証一部上場・ソウルドアウト株式会社社外取締役
関心領域:マーケティング論・ブランド論・広告論
田中洋 中央大学ビジネススクール教授のオフィシャルサイト

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