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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

異常な水害多発は偶然ではなかった!世界的「水」危機で平和な生活の維持困難に!

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
異常な水害多発は偶然ではなかった!世界的「水」危機で平和な生活の維持困難に!の画像1「Thinkstock」より

 今年の夏の暑さは、異常ですね。5月の前半ですでに30度を超える日が続出し、7月7日の七夕の日には東京で37度を記録しました。中部地方や九州でも軒並み記録的な暑さとなり、その後も真夏日が続き、それどころか猛暑日も去年までよりずっと多く、その日数を数えるのも暑苦しいという状態です。さらに今後も暑さは続くようですので、熱中症にならないように適度な水分補給を欠かさないようにしなければいけません。

 追い打ちをかけるような話ですが、暑さと同時に関東地方では水不足も起きました。こうなると、梅雨や台風が、いかにありがたいものかわかります。雨の日を嫌がってなどいられません。温暖化が進み気圧の配置が変わると、日本の水不足はますます深刻なものになると予想されていますが、そんな予想は外れてほしいものです。飲み水に事欠くような状況になったら、それこそ死活問題です。

異常な水害多発は偶然ではなかった!世界的「水」危機で平和な生活の維持困難に!の画像2

 そうかと思えば、局地的なゲリラ豪雨に見舞われた地域もずいぶんありました。筆者も8月初旬、東京からの帰途でひどい目に遭いました。豪雨の影響を受けて新幹線のダイヤが大幅に乱れ、品川駅のホームが大混乱。ようやくのことで「のぞみ」に乗りましたが、名古屋に着いて吃驚仰天の大混雑でした。ホームどころか駅の通路にまで人があふれ、すべての在来線がストップしておりました。

 小一時間も待ったでしょうか。一向に動く気配もない東海道線をあきらめ新幹線に再び乗り、家族に頼んで新幹線の駅まで迎えに来てもらい、なんとか帰宅したのは深夜0時でした。それでも帰り着けたからよかったようなものの、名古屋のホテルは軒並み満室で泊まることもできず、たまたま用事で名古屋まで行っていた友人の奥様が帰宅したのは深夜2時を回ってからだったそうです。平均的に、万遍なく、過不足なく、雨が降ってほしいものですが、なかなかそううまくはいかないものです。

危機的状況に陥っている「水」の実情

 地球は「水の星」といわれるくらいで、その水があるからこそ私たち人類を含めて、さまざまな生物が生命を得ているわけですが、実は地球のシンボルである水が今、危機に陥っているのです。地球の表面の70%は海、残る30%は陸とよくいわれますが、地上の水のうちの98%は海水です。つまり、淡水は残りの2%しかありません。しかも、私たち陸上に暮らす生物が利用しているのは、水全体のわずか0.01%だそうです。

 自然になっているものか栽培されたものかは別として、植物が生きていくためにはどうしても水が必要です。もちろん、動物が生きていくためにも水はなくてはならないものです。

 一般に、穀物1キログラムを生産するために、約1トンの水が必要とされ、大豆などは1キログラムを生産するために、約2.5トンの水が必要といわれます。そして今、大きな問題としてクローズアップされつつあるのが、食肉生産のために使われている水の量です。牛肉1キログラムを生産するために使われている水は、なんと20トンです。今のままの勢いで肉食の比率が増えていくと、間違いなく私たち人類は水不足によって破滅するとまでいわれています。

 世界規模で見てみると、1960年代に年間7000万トンだった食肉の消費量が、1980年代には1億4000万トンと倍になり、2000年代に入ると2億5000万トンにまで増えています。

 今年、オリンピックの開催によって賑わっているブラジルのリオデジャネイロで、1992年に歴史的な会議が開かれました。「地球サミット(国連環境開発会議)」です。その時に採択された「アジェンダ21」では、毎年3月22日を「世界水の日」とすることが決定されました。

 本当に水のことを考えるのであれば、当然のことながら私たちの食料のことも同時に考えていかなければなりません。この先、私たちが豊かさの中で、さらなる発展を続けるために何が必要で何が不必要なのかを考えなければならないということです。何を食べ、何を食べないのかという選択をしなければなりません。それは、世界的な会議で決定されることではなく、日々の私たち自身が個々に決定し、日々の行動を通じて実践し続けられることでなければならないと思うのです。

 世界の穀倉地帯のひとつといわれているアメリカ中西部では、毎年10メートルずつ地下水の水位が下がっています。さらに深刻なのは、その地下水に塩水が混じり始めていることです。そのためにアメリカの農業が破たんするのではないかとまでいわれています。

 また、中国では重金属類や有毒物質の汚染によって80%以上の地下水が飲料として適さない状況だといいます。その一因として考えられているのが、農薬や化学肥料の多用です。

日本の水事情

 狭い国土の日本でも同様のことは起こっています。それは水田の減少です。農業に携わる人が減り、田んぼの世話をする人の数も減り、これまで長きにわたって灌漑装置としての役目も果たしてきた水田が消え去っていっています。都市部に水害が多くなってきているのは、単なる偶然ではないのです。農業が衰退し食料の輸入量が増えることで、その食料を生産している土地で使われている水のことも考えなくてはならなくなりました。

 その水は、私たちの目には見えません。だからその水のことをバーチャルウォーター(仮想水)と呼びます。日本は、小麦や大豆などの穀物類だけで、年間約100億トンものバーチャルウォーターを使い、牛肉だけでも150億トンを使っています。日本が使っているすべてのバーチャルウォーターを計算すると、毎年800億トンを超えるといわれています。このことを考えずに日々を暮らしていていいのでしょうか。心ある人ならば、この現実がこのままでいいのかどうか、考えざるを得ないのではないでしょうか。

 筆者は、この連載を通じて、また講演や執筆などで日常的な食生活の大事さを訴えてきました。私たちにとっての最適(オプティマル)な食事のバランスも示してきました。すべての方からご賛同を得ているわけではありませんが、日に日にそのご賛同の声が高まっていることを、ひしひしと感じています。

 それは世の中の動きが、意識的、無意識的を問わず、これまでの過ちを改め、より良い世界、社会を新しく築いていくべきだという方向に進み始めたからだと確信しています。そのパワーは数年前とは比べることもできないほど大きく、強く成長しています。

 もうすでにお気づきの方が多いと思いますが、筆者が主張している食事のあり方、方法論が間もなくブレイクするでしょう。そうでなければ、私たちの平和な生活を維持することができなくなるからです。そしてその前に、既得権益にしがみついている人たちの最後の抵抗があるだろうと思います。それも致し方のないことなのでしょう。この流れをもう変えることができない以上、その抵抗はどこかで潰えます。その時は、すべてを水に流しましょう。流す水が残っていればの話ですけれど。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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