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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

シャープ、深刻な本当の病状…7千人削減は必要最低条件、一事業除く全事業売却も

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

 これが短期間のうちに克服されればよかったのですが、売上総利益率は以下のとおり低迷しました。

・19.1%(09年)
・18.8%(10年)
・16.8%(11年)
・10.5%(12年)
・18.1%(13年)
・13.9%(14年)

 20%台に回復することはできず、巨額の赤字を立て続けに出し、シャープは自主再建できない事態を招いてしまったのです。

事前の約束が反故にされることはわかりきっていた話

 ところで、シャープの支援候補者には、産業革新機構と鴻海の2社がいました。このなかから、シャープ経営陣は革新機構ではなく鴻海を選びました。その理由として報道されたのは、以下の2点です。

(1)革新機構の支援案は、出資金の上限が3500億円であるのに対し、鴻海案のそれは約4800億円だった。
(2)革新機構案が液晶事業を分社化し、社長を含む3首脳を退陣させる方針であるのに対し、鴻海案が現経営陣の継続と液晶事業、雇用の維持を約束するものだった。

 しかし現実には、シャープが鴻海の傘下にはいることを決定したあとで、これらは大きく変更されてしまいました。

 まず、資本支援については、シャープにおける簿外の偶発債務の存在を理由として、資金拠出額が1000億円ほど減額され3888億円となりました。また、第三者割当増資とほぼ同時に高橋社長は辞任しました。

 さらに、従業員については7000人規模のリストラ案があることも報道されており、鴻海ではなくシャープ経営陣の不明を非難する報道が少なくありません。

 とくに「雇用の維持」がこのままでは無理だということは、前述した粗利益の低下によりわかりきったことでした。20%台に回復できない売上総利益率の改善を、人員削減なしにできるわけがないのです。
 

想定されるシナリオ

 ところで、こうして鴻海の傘下に入ったシャープですが、シャープのセグメント情報を見る限り、その再建は容易ではないと思われるものの、けっして不可能だというわけではありません。
 
 ここで、シャープにおける事業種類ごとの開示情報をみてみると、シャープには次の5種類の事業があります。

(1)コンシューマーエレクトロニクス
(2)エネルギーソリューション
(3)ビジネスソリューション
(4)電子デバイス
(5)ディスプレイデバイス

シャープ、深刻な本当の病状…7千人削減は必要最低条件、一事業除く全事業売却もの画像3シャープが営む5種類の事業とその主要製品

 そして、これらの各事業における15年度業績は、以下のとおりでした。

シャープ、深刻な本当の病状…7千人削減は必要最低条件、一事業除く全事業売却もの画像4

 これをみると、(1)コンシューマーエレクトロニクス、(2)エネルギーソリューション、(5)ディスプレイデバイスは赤字なのに対し、(3)ビジネスソリューション、(4)電子デバイスでは黒字になっているのがわかります。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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