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もうブラック企業なんて呼ばせない!ワタミ、解体的「脱ブラック化」改革の内実

構成=小野貴史/経済ジャーナリスト
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「社員の成長を期待するあまり、高い水準を要求する」ということはよくありますし、応えられる社員が多いうちは問題ないのですが、会社が拡大し、従業員も増えれば、社員の価値観も多様になってきます。そんなところに、創業時と変わらない厳しい要求が投げかけられると、「無理強い」と感じてしまう社員も少なからずいたことでしょう。何も「会社ぐるみで若者を使い潰してやろう…」といった悪意があったわけではなく、あくまで善意によるものですが、ひずみが修正されないまま成長を続けたことが大きな原因だと考えています。

――ブラック企業の社長には支配欲求の強い人が多いように思います。「自分は人を使う側の人間で、他の社員は使われる側の人間なのだから、自分の言うことに全面的に従え」という処世観を持っている人が多い。

新田 ブラック企業と呼ばれる多くの企業の社長にはそういうタイプが多いでしょうね。しかし渡邉さんの場合は逆で、「社員全員が経営者マインドを持つべき」という考え方です。「店長なら会社に使われる人間ではなく、店舗という会社を経営している社長のような存在なのだから、その視点で考えて行動しなさい」と社員に話すのです。確かに正論であり、そんなマインドが理想なのですが、そうはいっても実際は経営者でなく一社員なので、齟齬が生じるわけですね。
 
 取材を通して振り返ってみると、ワタミという会社からは「社員を使い潰そう」というマインドは感じられませんでした。実際、賃金は飲食業界のなかでは良いですし、やる気のある社員にはFCオーナーとして独立を促し、好業績店を任せる仕組みを早々に構築しているぐらいです。

――渡邉さんは長時間労働について、どのように考えていましたか。

新田 長時間労働を美徳と考えるのではなく、「自分の店なのだから、自分のやりたいように運営しなさい」という考え方です。世間から見るワタミは、「勤務時間内に終わらない大量の仕事を無理やり与えられ、社員が苦労している…」というイメージがあるかもしれませんが、事実ではないですね。繁忙店の店長でも、自ら仕事を効率的に工夫して、残業なく店を切り盛りできている人もいます。

 店舗勤務の場合、開店は17時ですが、段取りの良い社員は15時頃に出勤して普通の業務をこなして店を回しています。一方で、段取りの苦手な社員は13時に出勤して、どうにか店を回している状態で、このタイプの社員をマスコミは面白おかしく取り上げてきたわけです。渡邉さんも「早く出勤して働け」などとは言っていません。

(構成=小野貴史/経済ジャーナリスト)

※後編へ続く

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