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小林敬幸「ビジネスのホント」

シニア世代「転職時代」の今こそ、50代で「さっさと」退職・転職を繰り返す生き方

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 また、さまざまな職種の資格を多様なレベルで認定して、転職しやすくしている。それにより、新規事業の成長性も、国全体の経済成長も高い。その好調な経済が高福祉を支える経済的原資を産み出し、好循環になっている。

シニアの転職による雇用流動性の向上

 人が働く期間は、おおよそ20歳から75歳までの約55年と長い。しかし、現代は産業の成長スピードが速く、どんな成長産業も10年もすれば、衰退産業になってしまう。

 そこで、企業が終身雇用制を実行して企業業績が悪化しないと解雇できないとすると、生産性の低い産業分野がいつまでも労働者を抱えて低収益にあえぐ。労働者も、リストラされるよりもましと、実質上の賃金カットを受け入れる。そうすると、消費も拡大せず、投資も増えず、ますます日本全体の成長が停滞する。そして、企業の生産性が低迷し、低賃金になり、高福祉を支える財源を確保できないという悪循環が続いてしまう。

 日本社会は、今の働き方を変えなければならない。日本の経済状況をよく観察して、受け入れやすい産業分野と労働者層から順次導入するのが現実的だ。

 いきなりアメリカのような「ワイルドな社会」をそのまま目指しても、ワイルド過ぎて摩擦のほうが大き過ぎ、日本社会には適合しないだろう。むしろ欧州、特にデンマークのモデルなどを参考にしながら、雇用の流動性を高めていくのが現実的だ。
 
 また、社会全体の制度すべてを同時に変えていくのも難しい。まずは、労働者の一部であるシニア世代から、その雇用の流動性を先導するのも一法だろう。というのは、先に見たように、シニア世代は、すでに定年の60歳頃をきっかけに10~20年と続く転職人生に踏み出し始めているからだ。

 日本の強みとも思われたユニークな制度である終身雇用制の発想が、今は雇用の流動性を阻んでいる。ところが、皮肉なことに終身雇用制と並んで日本の特異な雇用慣行である定年制を背景にして、現代ではシニアの転職により雇用の流動性を活発化できる状況にある。

「会社は出たけれど」

 シニアの雇用は、勤務時間、勤務地、職務内容について労働者の希望にあった限定をしながら、雇用期間はせいぜい5年程度を想定した「正規限定社員」や「有期契約社員」になる。そういうシニアの流動性の高い雇用市場が大きくなれば、好景気で労働者が他の就職先が見つけやすいときに、企業は人員削減による収益力の向上ができる。また、新規成長部門に、経験ある優秀なシニア人材を投入できる。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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