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ライザップ、大量CM依存ビジネスを脱却…鈴木前セブン会長を追放した男を招聘の劇薬改革

文=編集部
ライザップ、大量CM依存ビジネスを脱却…鈴木前セブン会長を追放した男を招聘の劇薬改革の画像1「Thinkstock」より

 トレーニングジムの「RIZAP(ライザップ)」は、何かと話題に事欠かない。「結果にコミットする」のキャッチコピーと、ダイエットのビフォー・アフターを示したテレビCMで大ブレイクし、勢いを保っている。

 運営会社のRIZAPグループ(7月1日に健康コーポレーションから社名変更)は9月5日、一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄氏を経営諮問委員に招聘したと発表し、産業界を驚かせた。

 伊藤氏は、流通業界のカリスマ経営者と呼ばれたセブン&アイ・ホールディングス(HD)元会長兼最高経営責任者(CEO)の鈴木敏文氏を放逐した人物として名声が上がった。

 鈴木氏はセブン-イレブン・ジャパン社長の井阪隆一氏を解任する人事を、伊藤氏ら2人の社外取締役を含む指名・報酬委員会に諮った。同委員会で人事案は差し戻されたにもかかわらず、鈴木氏はその人事案を4月の取締役会の議案とした。ここでも伊藤氏の「無記名投票にゆだねよう」という動議の結果、否決された。仮に記名投票や挙手による採択をしていたら、結果はどうなっていたかわからないとの声が多い。

 直後に鈴木氏は電撃辞任を表明し、セブン&アイHDの新しい社長に井阪氏が就いたのは、周知の通りである。

 2015年は投資家主導の企業統治元年だった。東京証券取引所でコーポレートカバナンス・コード(企業統治指針)が導入され、独立性の高い社外取締役を2人以上選任するよう求められた。社外取締役は経営者の利害に左右されない自主独立が求められた。経営者の言いなりにならないことが条件だ。

 それまでセブン&アイHDの人事は、“超ワンマン”鈴木氏の鶴の一声で決まっていた。理不尽な人事が何度も強行されてきた。鈴木氏は、井阪氏を解任する人事も、すんなり進むと考えていただろう。だが、独立社外取締役の伊藤氏が、企業統治の手続きを無視した鈴木氏の独断専行に「待った」をかけた。鈴木氏には想定外の事態だったに違いない。独立社外取締役は、ワンマン経営者に「御意」と叫んでもろ手を挙げて賛成する存在ではなかったのである。

ROEが金科玉条の時代のスター

 伊藤氏は並の経済学者ではない。1975年一橋大学商学部卒業後、同大学商学部講師、助教授、教授と昇進を重ね、2000年に同大学大学院商学研究科長・商学部長、04年副学長・理事を歴任し、15年に定年退職した。同年大学院商学研究科特任教授、CFO教育研究センター長となった。

 現在、セブン&アイHD、東レ、住友化学、小林製薬、曙ブレーキ工業の社外取締役を兼任する。

 伊藤氏の名を高めたのは、14年夏に発表された「伊藤レポート」である。経済産業省が取り組んだ「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトで座長を務めレポートをまとめた。日本のコーポレートカバナンス理論のベースをつくった、いわば企業統治学派の家元みたいな人物なのだ。

 伊藤レポートが打ち出したのが、ROE(自己資本利益率)を重視すること。企業が株主から預かった資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す数値である。「8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべき」と指摘した。ROEを引き上げることが経営者のひとつの目標となった。

 ちなみにセブン&アイHDのROEは6.9%で、基準の8%に達していない。伊藤レポートに従えば、経営努力の必要ありということだ。

「ミスターROE」の異名を持つ伊藤氏は、最高財務責任者(CFO)の育成に取り組む。伊藤氏がセンター長を務めるCFO教育研究センターは、未来の財務のプロを育てる“CFO士官学校”である。

 企業の投資家向け広報(IR)をテーマとする「日経IR・投資フェア2016」が8月26日、東京・有明の東京ビッグサイトで開幕した。伊藤氏は企業統治改革が企業価値に与える影響をテーマに講演した。来場者は7301人に上ったと報じられた。伊藤氏は、ROEが金科玉条となった時代の流れに乗り、スター並みの人気者になったのだ。

 RIZAPグループは、企業統治学の教祖を経営諮問委員に招くわけだ。ほかの経営諮問委員には、竹中平蔵慶應義塾大学名誉教授、藤田勉シティグループ証券顧問(前副会長)、松岡真宏フロンティア・マネジメント代表取締役が就任している。いずれも一言居士の面々である。

 伊藤氏に対して、「M&Aを中心とする経営戦略や真のグローバール企業になるべく、大局的な成長戦略の策定に助言・指導をいただく」と、RIZAPグループは期待を述べている。

広告費を削減して成長できるか

 RIZAPグループは、創業事業である美容・健康関連の通信販売と、ライザップが経営の二本柱だ。足元の業績はライザップが大当たりした結果、絶好調。16年4~9月期の連結決算の見通しを大幅に上方修正し、売上高は前年同期の1.6倍の418億円、純利益は3.2倍の26億円とした。

 ライザップ利用者のリピート率が高まり、CMなどの広告宣伝費が相対的に低下したことによる。15年4~6月期の広告宣伝費は27億8000万円で売上高(121億3200万円)の22.9%だったが、16年同期の広告宣伝費は24億2900万円となり、売上高(198億3400万円)の12.2%に減った。

 ライザップは現在83店だが、17年3月末までに120店に拡大する計画。株価は15年5月26日に1085円をつけたが、現在は800円台で推移している。

 RIZAPグループのビジネスモデルは、広告宣伝費を大量に投入して顧客を呼び込み、宣伝で集まった顧客が去ったら再びCMを流して新規のユーザーを集めるというものだ。利益が上がらず宣伝費を捻出できなくなったら、成長は止まる可能性が高い。

 経営諮問委員に招かれた諸先生方は、CM依存のビジネスモデルから脱皮するためにどんな助言をするのか。また、伊藤氏が何を言うのか注目したい。
(文=編集部)

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