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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

抗菌・薬用石鹸等は人体に有害の危険?「抗菌効果高い証拠なし」として販売停止、米国で

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 日本国内では、これらの成分を含有する薬用石けんは、現在流通していない製品も含めると約800品目承認されていますが、今のところ、これらの製品に関連した医薬品医療機器法上の健康被害は報告されていません 。

 今回のFDAの規制について日本のメディアでは、「有効性、安全性の科学的根拠がないことが取り消しの理由」と報道されているようですが、一番の問題点は、抗菌性に有効性が認められないということはもとより、安全性が証明できないばかりか、こうした製品が広く普及することによって人体に多大なダメージを与えることにつながる点ではないでしょうか。

抗生物質が耐性菌を生んだ

 筆者は、その最大の問題点は「耐性菌を生むこと」にあると考えています。

 抗生物質の乱用によって、抗生物質に耐性を持つ「耐性菌」が生まれます。患者さんに薬をお渡しするとき、私たち薬剤師が「抗生物質は最後までしっかり飲み切ってください。治ったと思って勝手にやめないでください」と念を押してお話するのは、生き延びた細菌がその抗生物質に耐性を持ってしまうことを防ぐために、しっかり叩いておくということが大切だからです。

 アメリカでは多くの抗生物質に対して耐性を持つ「多剤耐性菌」が大きな問題になっていて、米疾病対策センター(CDC)によると、米国内で耐性菌による感染症で命を落とす人の数は、少なくとも年2万人以上に上るとされています。特に、病気や事故などで入院し、病院内で耐性菌に感染して死亡するケースが増えているようです。 日本でも多くの耐性菌感染例が報告されています。

 耐性菌が増える理由は、「過剰な抗生物質の乱用」です。最近ではウイルス感染による風邪に抗生物質を処方しないケースも増えているようですが、医療現場での不必要な抗生物質の処方だけでなく、畜産・養鶏の現場でも家畜や鶏の成長を促すために抗生物質が乱用されています。さらに、今回FDAが禁止した抗菌石けんやその他の抗菌製品が、明確な効果が確認できないにもかかわらず広く使われることも、耐性菌を増やす一因になっている可能性があるとFDAは警鐘を鳴らしているのです。

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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