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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

週休3日制でGDP増、子育て支援との両立を…世界で突出した長時間労働・低生産性

文=小黒一正/法政大学経済学部教授

週休3日制でGDP増、子育て支援との両立を…世界で突出した長時間労働・低生産性の画像3

 この図表の「青色の曲線」(上に凸の曲線)が、1人当たりGDPと労働時間の関係を表す。この曲線が妥当な場合、横軸の「年間平均の労働時間」が約1000時間の辺りが、縦軸の「1人当たりGDP」が最大になる労働時間であることがわかる。

 これは、日本の現時点(15年)の労働時間が約1700時間のため、700時間も減らすことができる可能性を示唆するが、この点については留意が必要である。

 というのは、図表2の曲線のうち「青色の太線」部分は、図表1のOECD諸国の「年間平均の労働時間」データで実際に値が存在する部分であり、「青色の細線」部分は実際に値が存在しない部分を表すからである。たとえば、横軸の1500時間に相当する値はOECD諸国の「年間平均の労働時間」データに存在するが、横軸の500時間に相当する値は存在しない。このため、図表1のデータから判別する限り、「青色の細線」が現実に存在する保証はないが、「青色の太線」部分と「青色の細線」部分の境界は、年間平均の労働時間が約1360時間である。

 したがって、図表2の関係が妥当であれば、労働時間を約1360時間まで減少させても、1人当たりGDPは上昇する可能性がある。日本の現時点(15年)の労働時間は約1700時間のため、年間平均で約340時間の減少に相当する。1日の労働時間が8時間の場合、約340時間は約42.5日の労働に相当し、週休3日制を実現できるような労働時間の減少であり、これだけの時間が確保できれば、子育て・介護などを含む仕事と生活の調和、すなわちワーク・ライフ・バランス(work-life balance)の実現もはるかに容易になるはずである。また、具体的な労働時間の減少ボリュームについては、基本的に労使の交渉に委ねることが望ましいが、それが実現しない場合、労働時間規制で誘導する方法も考えられる。

 いずれにせよ、政府・与党は今、「(1)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」「(2)賃金引き上げと労働生産性の向上」「(3)時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正」等を掲げて、「働き方改革」に力を入れているが、以上のような視点を含め、1人当たりGDPと労働時間の関係についても、深く検討を進めてみてはどうか。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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