市場関係者たちを驚かせたのは、1840億円という買収価格だった。株式の時価総額が7000億円と期待されているユー・エス・ジェイが再上場したときに得られるはずの上場益に比べると、買収価格があまりに安かったからだ。
コムキャストは、単なるケーブルテレビ会社ではない。全米3大テレビの一角であるNBCと、6大映画会社のひとつであるユニバーサル・スタジオを傘下に収める全米最大級の総合メディア・グループである。
日本のUSJは、米ユニバーサル・グループ各社からライセンスの供与を受けて運営されている。したがって、ユニバーサル・スタジオは世界戦略の一環としてユー・エス・ジェイを買収するわけだ。
コムキャストは、割安な価格でゴールドマン・サックスグループなどから株式を手に入れた。その見返りがユー・エス・ジェイの再上場なのだ。49%の株式を保有するゴールドマン・サックスグループとMBKパートナーズには、上場によって多額の上場益が転がり込んでくる。
USJに投資した外資の出口戦略は2段階方式であったことがわかる。第1段階は保有株式の半分をコムキャストに安値で売却すること。その上で、株式上場の際に残り半分を高値で売り抜けることが担保されたわけだ。コムキャストという大きなバックを得たUSJの株価は一段と高くなると見越した第2段階なのだ。コムキャストとゴールドマン・サックスの双方が利益になる出口戦略が練られたことになる。
USJの入場者数は東京ディズニーシーを抜いて世界4位に浮上
コムキャストにとって、本国を上回るUSJの集客力は垂涎の的だった。
米テーマエンターテインメント協会の調べによる15年の世界のテーマパーク入場者数ランキングによると、ハリポタ効果で入場者が急増したUSJが躍進した。
1位はウォルト・ディズニー・ワールドのマジックキングダム(米国)、2位はディズニーランド(米国)、3位は東京ディズニーランド(前年比4.0%減の1660万人)。ベスト3に変わりはないが、4位はUSJ(同17.8%増の1390万人)だった。東京ディズニーシー(同3.5%減の1360万人)を抜き、5位から4位に浮上した。
コムキャストの買収後に就任したジャン・ルイ・ボニエ最高経営責任者(CEO)は、「今後4年で来場者を今の1400万人から、200~300万人上乗せしたい」と語っている。株式上場によって得た資金で、大型アトラクションに投資して、入場者数を1600万人から1700万人に増やし、東京ディズニーランドに肉薄する計画を立てているのだ。