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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

適正体重や理想体重、無意味で非科学的?日本の「肥満」の定義は厳しすぎる?

文=新見正則/医学博士、医師

「BMIの値で肥満をグループ分けすることは、日本でも世界保健機構(WHO)でも行われています。日本肥満学会の基準は、 18.5未満が低体重(痩せ型)で、18.5以上25未満が普通体重、そして25以上が肥満(1度)、30以上が肥満(2度)、35以上が肥満(3度)、そして40以上が肥満(4度)となります。

 一方でWHOのほか、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどはBMIが30以上は肥満で、25から30は過体重とされます。日本では25以上が肥満という厳しい定義になっており、肥満による合併症が“わずかの肥満”からでも始まるという意見が反映されているためです。グループ分けに使用されている数字がキリがいい数字ばかりということは、その数字に科学的・統計的に特別な意味づけはないと思っていいでしょう。むしろ、そのグループ間でいろいろなことを比べることで、将来的に本当に普通体重群がほかよりも秀でているかが判明するのです。また、BMIをもう少し細かく切り分けた群にしないと、理想的な体重は判明しないでしょう」

 そこで非常識君が尋ねます。

「もしもBMIの適正な範囲が正しいのなら、なぜメタボリックシンドロームの診断基準にはBMIが登場しないのですか?」

 常識君の解説です。

「メタボの日本の基準は、腹囲が男性で85cm以上・女性で90cm以上なのが必須項目で、さらに以下のうちの2つを満たすこととなっています。

(1)中性脂肪150mg/dL以上、HDL40mg/dL未満
(2)血圧収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上
(3)空腹時血糖 110mg/dL以上

 確かにBMIは含まれていません。むしろ、必須項目の腹囲は内臓脂肪100平方cm以上を推測するための項目で、実際の内臓脂肪の測定には通常、放射線被曝を伴うCT検査が必要なので、腹囲で代用しているのです。つまり、メタボという将来に生活習慣病を合併するなどして命にかかわり、さらなる医療費を必要とされる“悪い肥満”の診断項目にBMIはありません」

人それぞれ

 そこで非常識君の主張です。

「特別に困っていなければ、つまり医学的に肥満による病気がなく、かつメタボの端緒となった内臓脂肪100平方cmに達していなければ、BMI値で肥満といわれても問題ないということを言いたいのです。BMIと内臓脂肪というダブルスタンダードが存在し、その説明が不明確なので世の中が混乱しています。人はいろいろです。周りの人と比べて少々痩せていても健康的な人もいます。一方、周りの人と比べて少々太っていても健康的な人もいます。性別や年令によっても異なるでしょう。個々人の体の特徴が、適正体重という概念には含まれていません。少々太っていても健康な人もいるという事実を、大切にしてもらいたいのです」

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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