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米大統領選・サウジ危機・中国急減速の3大衝撃が同時到来…世界経済混乱の兆候

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 14年10月、商品市場にショックが走った。サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが米国、アジア向けの原油輸出価格を引き下げ、減産よりもシェア確保を優先していることがわかったからだ。これを受けて、原油価格は急落し、15年年初には40ドル台半ば、16年2月には26ドル台にまで下落した。2月の安値以降、原油価格は減産への思惑、安値を拾う動きに支えられて反発し、6月には50ドル台を回復した。

主要産油国サウジアラビアの苦悩

 16年の半ば以降、一貫して減産に反対してきたサウジアラビアは、生産調整への理解を示し始め徐々に減産期待が高まった。それが鮮明化したのは、9月28日アルジェリアで開催されたOPECの臨時総会だ。ここで、OPECは原油生産量を日量3250万~3300万バレルに制限する目標を決定した。8年ぶりの減産決定だっただけに、投機筋は原油先物の買い持ち(ロング・ポジション)を積み増し、10月中旬、原油価格は52ドル程度まで値を戻した。

 この決定は、サウジアラビアの思惑に影響されている。同国は経済改革を遂行するために、少しでも財政の余力を高めたい。14年年央以降、原油価格が下落するなかでもシェア確保を重視したサウジアラビアは、政府傘下のファンドが保有する日本株などを売却したり、銀行預金を取り崩したりして、資金を確保しようとしてきた。しかし、状況は厳しい。秋口には、預金高の減少により銀行の資金繰りが悪化し、サウジアラビア政府が流動性支援を行った。

 サウジアラビアはシェア重視の姿勢を続けられなくなっているのではないか。サウジアラビアはムハンマド副皇太子の指揮のもと、脱石油を掲げた構造改革を進めてきた。一方で、イエメン内戦への軍事介入を行い、中東地域での影響力強化も狙っている。ただ、経済の停滞、イエメン情勢の泥沼化を受けて、ムハンマド副皇太子の政治基盤は不安定といわれる。そこで、原油価格に上昇圧力をかけ、社会心理の悪化を食い止めようとしている。

 一方、産油国が直面する状況は、それぞれ異なる。イランやリビアは増産を重視している。OPEC内では、これまで頑なに減産を拒否してきたサウジアラビアへの心理的な反発も強いはずだ。利害対立が続き、減産期待を通して原油価格に上昇圧力をかけられないと、サウジアラビアの状況はより厳しくなる。それを避けるためにサウジアラビアは譲歩し、一部の国の増産を容認しつつ、OPEC全体の目標決定であることを世界に示そうとした。

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