ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 典型的米国人が選んだトランプの罠  > 3ページ目
NEW
「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

米国しか知らない典型的米国人が選んだトランプ大統領は結局、現政権と同じ政策に走る

文=相馬勝/ジャーナリスト

 たとえば、日本の問題では今年の春、「日本からは数百万台の自動車がやってくるが、米国製はほとんど日本では売られていない」とか、「(建機大手の)コマツに(米の)キャタピラーがやり込められているのは、為替操作が原因だ」などと発言している。

 トランプ氏の発言が正しいかどうかは検証を避けるとしても、ヒラリー氏がもし、このような対日批判をすれば、すぐに「事実を認識してない」などと批判される可能性が大きいだろう。

 しかし、トランプ氏がこのような発言をするのは、同氏の対日観は、80~90年代の日米貿易摩擦が最高潮に達した時に形成されたものだからだ。

 たとえば、大統領選出馬表明会見の際にも「日本やその他多くの場所から、仕事を取り返す。私は我々の仕事を取り返し、我々にお金を取り返す」と発言しているが、これはトランプ氏が90年には米雑誌のインタビューで、「まず日本はアメリカに商品を売りにきて我々のお金を残らず日本に持っていく。次に、そのお金を返しに戻ってきてマンハッタン中の不動産を買いまくる。というわけで、両方ともこちらの負けだ」と語っている内容の裏返しだ。

 トランプ氏の激しい対日批判として、日本で大きな話題になったものとしては、「在日米軍撤退の可能性」や「(日本が)核兵器を独自に保有することを否定しない」などの発言がある。さすがのトランプ氏も日本の核武装容認論は取り消したが、このような発言はアメリカの大学で対日外交を学んだことがある者ならば、絶対に口にしないだろう。

 ところが、今のアメリカでは日本に関心を持って勉強する学生が激減している。筆者の米国留学時代の研究テーマは「日米中3国関係とアジアの安全保障政策」だったが、筆者が大学の研究所以外で接するアメリカ人で、日本のことに関心を持っている人はほとんど皆無だった。彼らの関心は「スシ」など日本食が主だった。

1年間は日米関係について発言を控える

 大半のアメリカ人にとって、彼らの生活圏は米大陸だけであり、地方で生活している人であればあるほど、一生アメリカから離れない人も少なくない。ましてや、世界地図の上で、日本がどこにあるのかを正確に答えることができる人は、一般の米国人のなかでは、少なくとも多数派ではない。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

米国しか知らない典型的米国人が選んだトランプ大統領は結局、現政権と同じ政策に走るのページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!