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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

「地方企業=疲弊」はウソ!「斬新すぎる」仏具で話題沸騰…社員20人の金属企業の挑戦

大崎孝徳/名城大学経営学部教授
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 4代目の瀬尾良輔氏が、東京での企業勤めを辞めて家業に入り、まずやりたかったことは「新たな商品を開発して新市場をつくる」ことであった。そのため、まったくの白紙状態で商品開発を始めたわけである。

 もともと仏具にかかわる商品を開発する意向はなかったものの、さまざまな検討を踏まえ、おりんを開発することに決定する。もちろん、単なるおりんではなく、新規性があり、かつデザイン性の高い製品開発が行われた。その後、こうした取り組みはさらに拡大する。

 昨今の住宅では、仏間、さらに和室すらない場合も多い。こうした状況にあって現状の仏壇は、一般消費者のニーズに合致していないのではないかと瀬尾氏は考えた。また、「現代のライフスタイルに適合した供養があるのではないか」「都会のインテリアに囲まれても違和感のない仏具とはどのようなものか」といった問題意識のもと、Sottoを立ち上げることになった。

 実際の商品開発においては、富山県総合デザインセンターの協力を得て、フラップデザインスタジオの岡田心氏にデザインを依頼している。

 こうした瀬尾製作所におけるSottoへの取り組みは、単なる製品開発の領域を超え、「新規の市場×新規の製品」を開拓する多角化ととらえられるだろう。

Sottoの課題

 Sotto は、2010年に立ち上げてから、じわじわと市場に浸透し始め、売り上げも伸びてきているが、一方で課題もある。

 まず、流通に関する課題だ。現在は卸売業者を通じて、実店舗の仏具店などに加え、インターネットでも販売されている。このような場合、たとえば、瀬尾製作所の希望小売価格が1万円であったとしても、ネットでは7000円に値引きされ、逆に仏具店では3万円で販売されるなど、実際の小売価格のばらつきがあまりにも大きく、消費者の信用を損なう可能性がある。もちろん販売価格の強制はできないものの、ある程度の幅に収める必要がある。

 また、極めて新規性の高い商品であるため、どのような場で商品を展開すればよいかということも模索の段階である。仏具店においてSottoは、従来の仏具とあまりにもかけ離れており、展示すると違和感が生じる。一方、インテリアショップなどでは仏具のコーナーが設けられていることはほとんどなく、そんななかで数種類の仏具が無造作に置かれていても、消費者の注目を集めるにはインパクトに欠ける。

 こうしたなか、瀬尾製作所は、新規の売り場として生花店に注目している。実際に、生花店が集まる花の展示会にSottoを出展する予定となっている。こうした不確実性の高い取り組みに対して自己資金で臨むとなるとハードルは高くなるが、行政からの支援を受けることができたため、思い切って挑戦することにしたという。

 もちろん、それまで世の中になかった新規性の高い商品の場合、普及に際して時間がかかるのはやむを得ない面もある。そもそも、消費者の意識変化にも時間を要することは瀬尾製作所としても織り込み済みである。

 しかし、こうした時間を少しでも縮めることは極めて優先順位の高い課題であり、瀬尾製作所は、そのためには仮に価格競争が生じるとしても、他社が同様の商品を投入することは歓迎する意向である。つまり、価格競争のマイナス面よりも他社参入に伴う認知度向上による市場拡大のプラス面のほうが大きいと判断しているのだ。

 市場が拡大した際に重要となるのが、他社と差別化できる強いブランドの構築である。そのために、まず自社の認知度のさらなる向上を目指し、商品のバリエーションを積極的に拡大していく。また、多くの日本メーカーは、アジアをはじめとする海外メーカーよりも現時点においては品質の面で大いに勝っているが、ブランド力の構築力は弱い。実績、時間、信頼感、口コミなどもブランドの構築において重要な要素となる。そのために、自社のホームページなどを通じた消費者との関係性構築といった取り組みは、極めて重要な課題となりそうだ。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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