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名和高司「日本型CSV確立を目指して」

最貧困層を救うビジネスの超優良企業…社会貢献の高さ=高収益の相関関係が鮮明に

文=名和高司/一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
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 これは、BOP(Bottom of Pyramid:最貧国)市場において、B・I・Pという3つのソリューションを提供するというものだ。Bは「ビジネス」で、貧困層を対象にした電気ビジネスに取り組む現地企業の創設を支援するための投資ファンドを設立するというもの。Iは「イノベーション」で、貧困層への配電に必要十分(Adequate)な製品・サービスや事業モデルの構築を支援するというもの。そしてPは「ピープル」で、貧困層の若年層に電気技術を訓練し、資金も提供するというもの。

 その結果、たとえばインドでは、12年までに300人の起業家(B)を支援し、40万世帯に光を提供するイノベーティブなプラン(I)を開発し、4000人の電気技師(P)を訓練することに成功している。

 現地に根を下ろして、ヒト・モノ・カネという経営資産を現地でじっくり育てていく手法は、さすがにかつて植民地政策に長けたフランスの企業らしい懐の深さを感じさせられる。「インフラ輸出戦略」で短兵急に新興国を攻略しようとする日本政府や日本企業は、このシュナイダーエレクトリックのCSV的な経営手法を、しっかりと学ぶべきである。

企業価値の源泉

 パネルディスカッションのなかで、筆者が「社会課題解決と経済価値の向上は、本当に両立しますか」と問いかけると、ケロー氏はこともなげにこう答えた。

「社会貢献は従業員の誇りになります。それが経済価値向上の源泉です」

 優秀な人材の確保、そして社員の仕事への情熱そのものが、企業の成長、そして企業価値の向上につながる。日本でも「働き方改革」がようやく始まりつつあるが、それ以前に、社会課題解決に向けた企業としての高い志を示すことにより、社員全員の心に火をつけることが、改めて求められているのではないだろうか。

 日本においてもようやく緒に就き始めたESG投資だが、その割合はまだ投資全体の1%にも満たない。欧米に比べ、機関投資家より個人投資家の割合が多いのが、その一因だといわれている。また日本の機関投資家も、ESG投資にはこれまで懐疑的だった。

 しかし、GPIFが舵を切ったことをきっかけに、これから大きく流れが変わるはずだ。筆者自身、内外の機関投資家から、CSVと企業価値向上の関係について、助言を求められる機会が増えている。

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