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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

「村おこし」の丁寧すぎる手づくり千円ハム、バカ売れの秘密?100%国産豚肉

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 販売エリアは、関東から福岡あたりにまで及ぶものの、主たる市場は岐阜や愛知を中心とする東海圏となっている。営業スタッフはわずか7名で、ルート営業5名、展示会要員2名である。営業担当者は、東海圏を中心に回っている。三越や高島屋といった百貨店、イオン、イトーヨーカ堂、バローといった大型スーパーに加え、精肉店や道の駅などでも商品を販売している。新商品を次々に市場へ投入するような戦略は採っていないため、対面営業をしなくても、電話やメールで円滑に営業業務が進むことも多い。ハムといえば、お歳暮などのギフトを連想する人も多いと思うが、実際にギフト販売は売り上げの3~4割を占めている。

 百貨店などの催事を担当する展示会要員に関しては、社員ではなく現地でアルバイトのマネキン(売り子)を雇えばいいとの考えもあるかもしれないが、こうした場は単なる販売の場ではなく、消費者の生の声が聴ける貴重なマーケティングリサーチの場である。そのため、同社では社員を派遣して消費者の声を少しでも多く収集し、開発部隊などを中心とした会社にフィードバックすることを非常に重要な取り組みとしている。

 たとえば、今年発売された新商品「ほんわか」は、展示会に来ていた高齢の消費者の要望を踏まえ、軟らかく、小さいサイズとなっている。

 今後の販売目標に関しては、手作業が多いこともあり、生産量を急には拡大できないため、現在の販売量が適正な規模ともいえる。そこで、急激な拡大ではなく、ニーズに合わせて徐々に増加させていければよいと認識しているようである。

市場および地元からの強いニーズ

 明宝ハムは1953年、当時の奥明方農協加工所の小さな1室からその歴史が始まった。農協が農山村の食生活改善運動と村の畜産振興を目的として、ハムの製造を開始したのである。しかし、当時は農家がハムを購入することは贅沢だと受け止められ、また大手メーカーにも歯が立たず、低迷が続く。

 その後、80年に転機が訪れる。情報番組『明るい農村』(NHK)で「農民ハム18万本」として取り上げられたのである。また、大量生産される大手メーカーの商品に対して、自然食ブームが起こり、着色料、防腐剤、酸化防止剤を使わず良質な豚肉を原料に「手作り作業で100%豚肉」という点が消費者から高く評価された。その結果、生産量は同年に10万本、83年19万本、87年には約38万本と成長を遂げた。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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