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年収100万円未満…アニメ制作現場、超絶ブラックで崩壊の危機か…離職率9割、人材使い捨て常態化

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育った優秀な人材は大手が引き抜くアニメ業界


 また、ヤマサキ氏は、離職率の高さや人材難は、アニメ業界の「雇用形態の不安定さ」にも原因があると語る。

「アニメーターは『業務委託』『フリーランス』というかたちの個人事業主であるケースがほとんどで、きちんとした雇用形態が保証されていないんです。本来は実力とやる気に加え、ギャランティなどの交渉能力が必要とされる職業なのですが、新人アニメーターは交渉力や技術力の教育が一切行われないまま、いきなり現場に出されてしまう。フリーランスとして活躍するには圧倒的に実力がない状態です」(同)

 そのため、多くのアニメ制作会社はアニメーターを正社員としては雇用しない。非正規雇用で作品ごとに駆り出されるという、まるで単発の作業員や期間工のような状態に置かれているのだ。上司や先輩からしっかりした指導を受けられない上、非正規のままでは実力がつかず、仕事の効率も上がらない。

「仮に制作会社が地道に人材を育てたとしても、非正規という雇用形態では資金が潤沢な大手の制作会社に人材を引き抜かれてしまうことも多い。うまく育った新人を大手が引き抜く風潮が横行していることも、制作会社側に『優秀なアニメーターを育てよう』という気概をより失わせている気がします」(同)

 そうやって、大手アニメ制作会社に生産性の高いアニメーターが集まり、中小の制作会社には経験が浅く、技術の足りないスタッフばかりという構図ができあがっていく。当然、生産性が下がり、利益率も低い。その結果、ますます非正規の若手アニメーターを低賃金で酷使せざるを得ないという悪循環に陥っていくのである。

ヒット作が出てもアニメーターは潤わない


 さらに、それに拍車をかけているのがアニメ業界特有の「多層構造」だ。

 業界では、新人アニメーターは動画担当としてキャリアをスタートし、経験や実力を高めて原画担当にステップアップしていくという流れが一般的だ。この「原画担当」とは、絵コンテにしたがってアニメーションの動きの元になるラフ画を描き、タイミングを決める仕事である。「動画担当」は、その原画を清書して動画として完成させる仕事だ。作品にもよるが、制作現場では100人以上のスタッフがかかわることもあるという。

 こうした手間と時間のかかる作業を積み重ねるため、アニメ制作には莫大な費用がかかる。一般的に、30分のアニメ作品にかかるコストはおおよそ1000万円から2500万円。1クール13話とすると、1作品におよそ2億円前後のコストがかかる計算だ。自社出資で制作して作品がヒットしなかった場合、アニメ制作会社には多額の負債が残ることになる。そのリスクを軽減するため、スポンサーや代理店が間に入るのだ。

 その上、次々と公開されるアニメ作品を世に出すには、大手制作会社が元請けとなり、実際のアニメ制作を中小の制作会社に分散して下請けに出さなければならない。もちろん、制作費からマージンが中抜きされるので、下請けになればなるほど利益が少なくなっていく。この建設業界や人材派遣業界のような多層構造で成り立っているのが、アニメという業界なのである。

 この構造では、仮にアニメがヒットしたとしても、末端のアニメーターが恩恵にあずかることなど皆無だ。『君の名は。』では大ヒットによる利益の還元が末端の動画スタッフまで行なわれているが、このようなケースは稀で、最近では「新人だけではなく、アニメーター全体の収入も減ってきている」とヤマサキ氏は言う。

「僕たちの世代までは、2~3年がんばれば、ひとり暮らしでも困らない程度の賃金を得ることができました。しかし、近頃はアニメーターの収入を聞いて『3年も業界にいるのに、それしか稼げていないのか?』と驚くことが多い。アニメ業界がいくら脚光を浴びても、実際に作品を制作している現場に下りてくるお金が圧倒的に少ないのです」(同)

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