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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

がんとボケ、どちらが幸せな死に方か?日頃から家族で「死に方」を語り合う大切さ

文=新見正則/医学博士、医師
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がんとボケ、どちらが幸せな死に方か?日頃から家族で「死に方」を語り合う大切さの画像1「Thinkstock」より

 今回は「死に方」の話です。“非常識君”は「がんで死にたい」という思いを持っています。一方で、“極論君”は「認知症で、そして老衰で死にたい」という願いを持っています。

 非常識君のコメントです。

「がんは死ぬ数カ月前までは元気です。そして最近はモルヒネなどの麻薬を十分量使用する啓蒙が行き届いています。痛みで辛い思いをするというイメージは昔のものになりました。そして、交通事故や心筋梗塞、くも膜下出血などで突然に死ぬのとは異なり、自分で最期を見つめることができます。いろいろとそこに向かって用意ができます。だから、がんで死にたいのです」

 極論君のコメントです。

「できれば、がんや心臓病や脳血管障害で死ぬのではなく、老衰で死にたいのです。歳を取れば認知症を患ってボケていくでしょう。でもボケていきながら、家族に見守られて死にたいのです」

 常識君のコメントです。

「病気を選ぶことはできませんから、そうなればいいなという希望ですね。まず、がんは最近の抗がん剤、放射線治療、外科治療の進歩によって、昔のような不治の病ではありません。早期に発見されればがんを完全に治療することができます。またステージ4といって、主病巣から遠いところに転移があっても、5年後に生きている人の割合(5年生存率)はどんどんと向上しています。しかし、がんの死亡者数は増加傾向にあります。日本人の約3分の1ががんで亡くなるという時代です。確かに、がんの患者さんは自分の人生の終わりまでのタイムコースを描くことができます。死を覚悟した状態で逢いたい人に会えて、残したい文章は残せて、いろいろと準備ができることは確かです」

だんだんと死に向かう

 さらに常識君が続けます。

「一方で、認知症から老衰で亡くなるパターンは、だんだんと死に向かいますので、自分で死をしっかり自覚することがありません。その時には認知症が進んでいます。元気な時は、いずれ死の準備をすればいいと思っていて、多くの方が、そんな準備はしません。そして認知症が進み、最期は自分も家族もわからなくなります。そんな時には、逢いたい人が誰かもわかりませんし、遺言を残すこともできません。でも、死ぬという恐れも意識しないので幸せだと言う人もいます」

 極論君が言います。

「できる限り長生きしたいのです。でも自分や家族がわからなくなれば、それは死ぬ時だと思っています。お迎えの時です。食べられなくなったらお迎えの時と思っています。胃に穴を開けて栄養を補給する胃瘻(いろう)といった処置は望みません。点滴も不要です。できれば大往生をしたいと願っています」

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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