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江川紹子の「事件ウオッチ」第70回

元慰安婦たちは置き去りのまま…【韓国・少女像設置問題】で問われる日本の外交手腕

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〈当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。〉

 ところが、日本の中では、元慰安婦の方々を卑しめたり、日本側には何の問題もなかったかのような言動も飛び交う。合意を大事にするのであれば、日本側から元慰安婦の尊厳を傷つけるような言動は断じて慎むべきだし、安倍首相にはそのような呼びかけをしてもらいたい。

 それは、国際社会の中で日本が「名誉ある地位」(日本国憲法前文より)を守っていくためでもある。

 日本側が対抗措置を取り、外交問題となったことで、今回の出来事は海外の国々でも報じられた。真珠湾訪問で、せっかく「和解の力」をアピールしたばかりなのに、アジアの国とはまだまだ和解に至っていないことが、国際社会に印象づけられてしまった。

 また慰安婦問題は、国連の人権委員会や女子差別撤廃委員会などでも取り上げられてきた。国際社会では、韓国政府よりもむしろ日韓のNGOなど、民間の組織や個人が問題提起をしてきたと言えるだろう。確かに、日韓合意で、両国政府は「今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」とあるが、これはあくまで「政府」の約束。民間の団体や個人が、それに縛られることはない。

 そうした国際社会の中にあって、「名誉ある地位」を守っていくには、まずは過去の問題に対する日本の誠実な姿勢を示し、多くの人々の心に印象づけることではないか。

(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。
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