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午堂登紀雄「Drivin’ Your Life」

不動産投資のプロの私がまさかの失敗か…具体例で学ぶ、「絶対に半分は成功する」方法

文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

 いずれにせよこれからの10年、投資家は損切り撤退か、耐えて待つかのどちらかの判断を強いられることになるでしょう。なお、原油安とナジブ首相のスキャンダルでリンギットはリーマンショック並みに下落していますから、預金の補填や繰り上げ返済をするには悪くないタイミングといえそうです。

 一方で、私がアメリカ・カリフォルニアに投資した物件は、ほとんど空室期間が長引くことなく順調に稼働しています。やはり先進国の中間所得層における住宅市場の分厚さを感じます。

 そんな違いを見て最近感じているのは、不動産投資初心者は、まず日本国内か先進国など住宅市場が成熟している場所で始め、余裕ができたら新興国へ、という順序のほうが堅実そうだな、ということです。

 現実にも上記と同じような供給過剰状態はマレーシアに限らず、タイ、カンボジア、フィリピン、ベトナムなど、東南アジア諸国で共通して起こっている事象です。たとえば、ちょっと前までは駐在員が住みたいような良質な居住物件が圧倒的に不足し、キャピタルゲインだけでなくインカムでも高利回りが期待できたカンボジア・プノンペンでさえ、今後供給ラッシュを迎え、未来は不透明になりつつあります。

 どの国も、需要を吸収し切れないであろう数の新規大規模プロジェクトが目白押しで、買っている人の約半数は外国人。全供給戸数の何割かは現地人に売らなければならないという規制がある国もありますが、先に売れているのは外国人枠で、ローカル枠は売れ残っているというプロジェクトも散見されます。

 現地人が殺到して買っているような物件を選ぶとか、たとえばハワイのようにそこにしかない希少性の高い特徴ある立地・物件を選ばなければ、出口に苦労するリスクが高くなるでしょう。

二段構えの投資戦略

 そうしたリスクを回避・低減するためのひとつのアイデアは、新興国不動産投資をするときには、複数の目的が達成できるようにしておく、というものです。

 私の場合、子どもの教育を一定期間、マレーシアでしたいという考えもあり、JBで不動産を購入したという理由もあります。マレーシアはイスラム圏とはいえ、他民族・他宗教国家で、多種多様な価値観に触れることができます。

 また、インターナショナルスクールでは、英語に加えてマレー語や中国語でも授業が行われるなど、マルチリンガル教育が基本です。スペイン語やフランス語を選択できる学校もあります。国際バカロレア(IB)認定校なら世界への進学の門戸が開かれていて、それが日本のインターナショナルスクールの学費の半分以下になるスクールもあります。

 そして子どもがひとりならともかく3人の予定のわが家では、中高合わせて10年くらいは現地に家族で移住することになりますから、拠点としての住まいは無駄ではないだろうと考えています。もっとも、私たち夫婦は日本での仕事がメインのため、行ったり来たりという生活になるとは思います。

 それに、もし人口増が予想を下回るペースが続けば、インターナショナルスクールの定員割れで学費が抑えられる可能性もゼロではありません。

 つまり冒頭で、「12年初頭にJBで不動産を購入したという当時の判断は、“半分”間違っていたかもしれない」と書きましたが、「予想通り子どもの教育に適した都市になりつつある」という点では、正しい判断だったともいえます。

 もちろん子どもの個性や適性にもより、それが良い結果となるか悪い結果となるかはわかりませんが、子どもには世界レベルで戦える基盤づくりとしての機会を与えてあげたいと考えています。

 というふうに、仮に不動産投資で儲からなくても、もうひとつの目的である移住・教育が達成できれば御の字であるという二段構えの戦略です。

 あるいは大好きな国・都市に、ホテルコンドミニアムのような運営形態(ホテル運営会社に管理を任せ、通常はホテル運用、年に何回かはオーナーが無料で泊まれる)の物件にする買い方も、余暇と実益を兼ねられる投資手法です。

 投資目的は人それぞれですが、計画通りには必ずしもならない新興国不動産投資のリスク軽減策のひとつとして、複数の目的を設定し、どれかがダメでもどれかは達成できるようにしておくことは、一考の余地があると思います。

 ちなみに私の場合、不動産投資だけでなくFXでも同様に、高金利通貨を下落時に買うという方法を取っています。仮に含み損が出て塩漬けになっても、その間はスワップポイントで稼ぎ、相場が回復すれば決済して為替差益を取るという二段構えです。

体験を経験に、経験を教訓に、教訓を新たな判断軸に

 以上が現時点でのJBに関する私の考察です。これを読んで、「いや、自分が感じているのとはちょっと違う」という意見もあるでしょう。その場合は、本人の感性を信じていただければよいと思います。あるいはJBへの投資を見送った投資家や評論家気取りのブロガーからは、「そら見たことか。ざまあみろ」などといった揶揄の言葉も聞こえてきそうです。

 が、あとからならなんとでも言えるわけで、リスクを取らないで他人に石を投げつけるような人は、そもそも何も成し得ない人種ですから無視するに限ります。

 それにこれは現時点でのピンポイントの考察のため、100%失敗だと決まったわけではありません。将来の変動要因は複数あるにもかかわらず、現況がそうだからとあれこれ他人を批判する人がいるとしたら、それは時間軸や環境変化に対する洞察が鈍いだけ。

 例えば、かつて楽天がスタートした時に「すぐに潰れる」という批判や、ソフトバンクがボーダフォンを買収したときも「借金が多すぎて失敗だ」などと批判する人が多かったですが、果たしてそうした批判が正しかったといえるでしょうか。

 それはともかく、もし私と同じ感想を持っている人は、ぜひこの経験を、より一段成熟した投資家になるための教訓として自分の中で昇華してみてはいかがでしょうか。ただ嘆くとか、目をつぶるとか、安易に逃げ出すのではなく、自分の判断の元となった根拠を振り返り、その合理性を検証するのです。その繰り返しが、次への新しい判断軸の形成につながるはずです。

 そしてこれから新興国不動産投資を検討している人に、以上の私の経験と印象もひとつのリスク要因として、あるいは判断材料としてお役に立てれば幸いです。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

 1971年、岡山県瀬戸内市牛窓町生まれ。岡山県立岡山城東高等学校(第1期生)、中央大学経済学部国際経済学科卒。米国公認会計士。
 東京都内の会計事務所、コンビニエンスストアのミニストップ本部を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして勤務。
 2006年、不動産仲介を手掛ける株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。2008年、ビジネスパーソンを対象に、「話す」声をつくるためのボイストレーニングスクール「ビジヴォ」を秋葉原に開校。2015年に株式会社エデュビジョンとして法人化。不動産コンサルティングや教育関連事業などを手掛けつつ、個人投資家、ビジネス書作家、講演家としても活動している。

Twitter:@tokiogodo

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