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白井美由里「消費者行動のインサイト」

なぜ混雑でイライラしてもあなたは買わされてしまう?混雑と消費行動の知られざる関係

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

混雑とユニークな商品への選好

 続いて、混雑が店や商品の選択に与える影響についてみていきたいと思います。

 混雑の感じ方は、自分から混雑している場所に行く場合と、自分のいる場所が他者が来ることによって混み合う場合とでは異なります。前者は自分の意思によるもの、後者は強制されたもので、後者のほうがよりネガティブに感じます。シュウらは、この2つの状況によって消費者の商品選択が異なることを実証しています【註6】。

 実験では、まず被験者にパソコン室の席に座ってなんらかの作業をしてもらい、続いて行うパソコン作業のときに、後ろ半分の席に座っている被験者に、パソコンが故障中という理由で前半分の空いている席に移動してもらい、それから作業をしてもらいました。最初から前半分の席に座っていた被験者は「強制された状況」に、移動した被験者は「自分の意思による状況」に置かれたことになります。また、このとき、被験者を隣り合って座る状況(混雑状況)と席を一つ開けて座る状況(空いている状況)のどちらかに割り当てました。そして、4種類のTシャツの写真を見せ、一つを選択してもらいました。4種類のTシャツの内、一つがロゴの色がほかとは大きく異なる「ユニークな商品」です。

 分析の結果、混雑している場合、「強制された状況」に置かれた被験者はユニークな商品を、「自分の意思による状況」に置かれた被験者はそれ以外の商品を選ぶ傾向がみられました。

 自分が座っている席の近くに他者が移動してきたことで混み合った場合は、自分のパーソナルスペースが侵害され、独自性が失われたように感じます。それは不快な感情なので、低下した独自性を回復しようとして、独自性が感じられる商品、すなわちユニークな商品に対する選好が高まったのです。反対に、自分から他者の席の近くに移動したことで混み合った場合は、自分の意思による接近なので、パーソナルスペースの侵害を強く感じません。むしろ、周りの他者に対して親近感を持ち、皆が選ぶような商品に対する選好が高まったのです。

混雑と安全志向

 混雑に遭遇すると安全性の高い商品への選好が高まることを示した研究もあります【註7】。マエングらは実験で、被験者を、混み合っている小部屋、あるいは空いている小部屋のどちらかに案内し、アルファベット表の中から単語を見つける作業をしてもらいました。アルファベット表には、「安全」と関連する単語やその他の単語が含まれています。そして次に、コンビニエンスストア薬局の間、クッキー1箱と救急関連製品の間、それぞれで好ましさを回答してもらいました。

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

学部
カリフォルニア大学サンタクルーズ校 1987年卒業
大学院
明治大学大学院経営学研究科
1993年 経営学修士
東京大学大学院経済学研究科
1998年 単位取得退学
2004年 博士(経済学)
慶応義塾大学 教員紹介 白井美由里 教授

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