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小笠原泰「コンピュータ技術の進歩と日本の雇用の未来を考える」

意識の宿ったAIが、人間の「不完全さ」をも完全に備え、人間を超越した後の世界は来るか?

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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意識の宿ったAIが、人間の「不完全さ」をも完全に備え、人間を超越した後の世界は来るか?の画像1「Thinkstock」より

 今回は、昨今流行語と化した「人工知能(AI)」と「深層学習(Deep learning)」について考えてみたい。ともにICT(情報通信技術)の革新的進歩による雇用喪失の核心的要因であり、これらはよくワンセットで語られるが、それは正しいのだろうか。加えて、これに「ロボット」が加わると、話はいっそうややこしくなる。そこで、少々乱暴ではあるが、AIと深層学習とロボットという3つの概念を整理してみたい。

 昨春、大方の予想に反して、プロの囲碁棋士を破ったグーグル・ディープ・マインドのアルファ碁に象徴されるように、機械(による自己)学習アルゴリズムは急速に進歩を遂げている。現在その先端にあるのが、深層学習である。これは、ニューラルネットワーク(形式ニューロン)という、人間の脳にあるニューロンの構造に着想を得た考え方である。

 形式ニューロンを層化する手法自体の歴史は古く、二層のパーセプトロンの開発が行われたのは1950年代終わりである。その後しばらく停滞していたが、2000年代後半に、コンピュータ技術の急速な進歩もあり、形式ニューロンの多層化が可能となったことで、機械学習の成果も飛躍的に向上した。「層を深くする」という意味で深層学習と呼ばれている。

 人間の大脳では、ニューロンの層は10層を超えない(小脳は3層)のだが、深層学習では、形式ニューロンの多層化とニューロン数の増加により、人間の脳をはるかに上回る効果的・効率的な機械学習アルゴリズムの開発を目指している。

 重要なことは、形式ニューロンという脳のアナロジーに引きずられて人間の脳の再現というイメージを持ちがちだが、深層学習の目的は、あくまでより良い機械学習アルゴリズム、つまり特定のミッションにおいて明示的なプログラミングをしなくても学習するアルゴリズムの追究であり、人間の脳をアルゴリズムで再現しようとしているわけではないという点である。この意味で、ニューラルネットワークよりも良い手法が開発されれば、現在の深層学習は別の機械学習の手法に代替されるはずである。開発手法の制約を受けずに機械学習アルゴリズムは進歩を続けるので、学習においては人間をはるかにしのぎ、知能の点では人間の理解を超えることになるであろうから、人間にとっては大きな脅威となる一面は否定できない。すでに、車の自動運転や碁や将棋など限定的な領域においては、人間並みかそれを上回るタスク処理が急速に可能になりつつあり、その領域も拡張されている。

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