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舘内端「クルマの危機と未来」

充電せず走れる日産ノート、トヨタのプリウスを凌駕…開いてしまった「パンドラの箱」

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表

燃費は良いが走り心地は悪い

 一方、1997年に登場して、今日までシリーズ・パラレル型というシステムを変えていないトヨタのHVは、モーターで駆動する範囲が狭く、かつモーターの力はノート(80kW)の半分近く(45kW)と弱く、電池の容量がノート(1.5kWh)の半分近く(0.94kWh)なのでモーターだけで走れる距離が短い。さらにエンジンも駆動に参加するので、上記のレスポンスが悪い。

 これは、ノートとアクアを乗り比べると、はっきりわかる。エンジンを持ち、その力で(間接的に)走るノートはEVではない。しかし、モーター駆動で走る点はEVと同じであり、そこがノートの最大の魅力となると、思わず「これはEV(と同じ)だ」と叫んでしまう気持ちも理解できる。

日産の巧妙な戦略とは

 ところで、なぜ日産はノートをシリーズ型としたのか。効率からすればトヨタ式のシリーズ・パラレル型にすべきである。

 おそらく理由は2つだ。ひとつは、トヨタのHVの特許に抵触せず、かつトヨタ式と違う個性を持たせたかったということだ。

 もうひとつは、ガソリンがある限り電欠の心配のないノートで、安心してEVの走り味を楽しみ、ユーザーにその魅力に取りつかれていただいて、やがてリーフのような純EVのユーザーになってほしいという戦略だ。

 もし、後者が理由だったとすれば、日産はなかなかの巧者である。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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