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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

プロが選ぶよく効く花粉症薬!NGの薬!食べるだけで治る「米」、完全に治癒、眠気少

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 とても紛らわしいのですが、最近の眠くならない予防効果もある抗アレルギー薬が「第二世代」、古くからある眠くなるけど抗ヒスタミン作用の強いものが「第一世代」と思ってください。

【ステロイド剤】:対症的効果

 ステロイド剤は、本来人体の副腎皮質で分泌されているホルモンを人工的につくり出した薬剤で、ヒスタミンによって引き起こされた鼻の粘膜の炎症、目の結膜の炎症を鎮めます。また免疫系の反応も低下させるので、アレルギー反応も抑える働きをします。その効果は非常に強力なので、花粉症だけでなく多くの炎症性の疾患での「切り札」的な薬です。

 花粉症では主に局所的に点眼、点鼻薬として使われていますが、症状が重い場合は内服薬のセレスタミン(抗ヒスタミン薬との配合剤)なども広く使われています。

 強力な効果を持つ半面、ステロイド剤には強い副作用があります。本来体が持っているホルモンを人工的に与えることで、体のさまざまな機能のバランスに影響を与えます。また急に中断すると副腎の萎縮によるリバウンドの危険もあります。花粉症で使用する程度の量であれば大丈夫といわれていますが、長期にわたっての使用は控えたほうがいいでしょう。目薬や点鼻薬など局所的な使い方でも、目や鼻の感染症が発生したり、鼻の粘膜が弱くなったり、緑内障の原因になることもあります。

 ステロイド剤には内服、点眼、点鼻のほかに注射もあります。

「注射一本で花粉症シーズンを楽にすごせる」として一時期はやりましたが、ステロイドの注射は内服に比べ、はるかにリスクが高いものです。

 同じステロイドでも、内服薬なら服用して数日のうちに代謝して体外に排泄されるので副作用が出たときは服用を中止することで対応できますが、注射の場合、効果が1カ月持続するので「楽でよい」と考えがちですが、重篤な副作用が生じた場合でも薬が排出されるまでの1カ月間、副作用も持続することになってしまいます。

 日本アレルギー学会でも、「花粉症に対するステロイド注射は望ましくない」と警告しています。忙しいビジネスパーソンの方などからステロイド注射のご相談をよく受けますが、どうしても必要という特別な事情がない限り、安易にステロイド注射をすべきではありません。打つとしても、医師から十分な説明を受け、リスクについてもよく話し合いましょう。

【レーザー治療】:予防的効果

 以前のレーザー治療といえば、鼻粘膜を焼いて花粉が吸着しないようにする炭化、蒸散を目的とした治療法でした。

 それに比べて、現在のレーザー治療はむしろ蛋白凝固、変性を目的とした治療を行っているようです。つまり、レーザー照射は“粘膜がないからアレルギーが発症しない”ではなく、“鼻粘膜に花粉が付着してもアレルギーが生じないように粘膜の性質を変える”ことで効果を発揮しているようです。

 現在、このようなレーザー治療を行っている施設は日本では少ないようですが、利点としては、治療が両鼻で5分程度と短時間で終わり、治療後の疼痛や鼻出血が少ないことがあります。あまり知られていませんが、このレーザー治療は保険適用の治療法で、本人負担は1万円程度です。1度で効果が出ない時は2度目のレーザー治療をします。

【減感作療法】:根本的効果

 減感作療法は免疫療法ともいわれ、その患者さんのアレルゲンをほんの少しずつ体内に入れ、徐々に増やしていくことでアレルゲンに対する過敏な反応を減らしていこうという治療法です。花粉症やアレルギー性鼻炎、気管支ぜんそくなどの病気に対して行われています。

 治療法には皮下注射と舌下があります。以前は皮下注射しかありませんでしたが、14年に、スギ花粉に対する舌下減感作療法薬のシダトレンが発売になりました。

 治療の開始は花粉の季節に症状が出てから行うのではなく、数カ月以上前から行わなければなりません。治療期間は、注射も舌下も2年から5年必要です。

 減感作療法は根治療法とされているので、ほかの対症療法より間違いなくお薦めの治療法です。しかし、治療期間が長いことがネックとなります。自宅で服用できる舌下減感作療法にしても数年間にわたって毎日服薬するのはハードルが高いようで、海外での治療実績をみても継続率は低いようです。

【スギ花粉症緩和米】:根本的効果

 昨今、「食べて治す治療法」として開発が進められているのが「スギ花粉症緩和米」です。農林水産省所管の農業生物資源研究所と日本製紙が共同で研究開発を行っており、舌下免疫療法と同じように、毎日食べる「ごはん」によって体にスギ花粉の免疫をつけていこうというものです。

 マウスを用いた薬効試験では、半年から1年ほどの摂取で花粉症の症状が抑えられることが確認されています。順調に開発が進めば、20年ごろには実用化される見込みです。もうすぐ「ごはんを食べて花粉症を治す」ことができる時代になりそうです。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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