ビジネスジャーナル > ライフニュース > マンモス、なぜ絶滅?2大仮説が対立  > 3ページ目
NEW
土屋健「楽しい古生物・化石の世界」

繁栄したマンモス、次々姿消し絶滅の真実…「過剰殺戮説」と「気候変動説」が真っ向対立

文=土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

 16年には、アメリカ、ペンシルバニア州立大学のルッセル・W・グラハムたちがアラスカのセント・ポール島における研究成果を発表している。この研究によると、セント・ポール島では、約5600年前までケナガマンモスの生存が確認されており、その2250年前から気候の乾燥化が見られたという。

 そのため、次第に水不足になり、ケナガマンモスの絶滅を招いたのではないか、というわけである。この研究では、約5600年前までに人類がセント・ポール島に到達した証拠は見いだせず、故に人類の影響ではなく気候変化に原因があったことを示唆した。

実は人類による殺戮説の方が有力?

 こうして見ると、近年の研究発表は、気候変化説を強めるものばかりが注目を集めているように見える。ただし、これはそれだけ「過剰殺戮説」が強固なことも示唆している。

 たとえば、北アメリカにおいては、人類が到着した時期と大型哺乳類の絶滅時期がほぼ一致するという指摘があるのだ。これは、なかなか強力な証拠といえるだろう。もちろん、気候の変化と人類の過剰殺戮との両方に原因を求める指摘もある。結局のところ、明確な結論は出ておらず、すべての研究者が納得するのはまだ先になりそうだ。

 ケナガマンモスの絶滅をめぐる研究は、多くのメディアの注目を集めるようで、しばしばインターネットメディアでも記事になる。そうしたときに、こうした研究史を知っておくと、ひとつだけの研究発表に流されることなく、もっと純粋に記事を楽しむことができるだろう。

 これから、筆者はこうした“古生物ネタ”を中心に、博物館やその企画展の紹介などを交えて執筆していく。企業情報やビジネス系の記事が多いビジネスジャーナルの中で、まぁ気分転換のネタとして、古生物話も楽しみにしていただけたら幸いだ。
(文=土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター)

【参考文献】
・Eleftheria Palkopoulou ほか(2013) Holarctic genetic structure and range dynamics in the woolly mammoth,and megafaunal diet,nature,vol.506,p47-51

・Eske Willerslev ほか (2014) Fifty thousand years of Arctic vegetation,Proc. R. Soc. B 2013 280, 20131910

・Russell W. Graham ほか (2016) Timing and causes of mid-Holocene mammoth extinction on St. Paul Island, Alaska,PNAS, www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1604903113

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

土屋健/オフィス ジオパレオント代表、サイエンスライター

修士(理学) 日本古生物学会会員 日本地質学会会員 日本文藝家協会会員
日本地質学会刊行一般向け広報誌『ジオルジュ』デスク
オフィス ジオパレオント

Twitter:@paleont_kt

『古第三紀・新第三紀・第四紀の生物 下巻』 古生物シリーズ第九弾は、『古第三紀、新第三紀、第四紀の生物 下巻』。 時代も新第三紀、第四紀ともなれば、誰もが“見知っている動物”がたくさん登場。 しかし、よくよく見るとどこか違う。 そんな古生物が多いのもこれらの時代の特徴です。 amazon_associate_logo.jpg

繁栄したマンモス、次々姿消し絶滅の真実…「過剰殺戮説」と「気候変動説」が真っ向対立のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!