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アップルストアが自社PCの故障を「クラッシュ」と呼ばないワケ

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アップルストアが自社PCの故障を「クラッシュ」と呼ばないワケの画像1※画像:『値決めの心理作戦 儲かる一言 損する一言』(日本経済新聞出版社刊)

 「いいものを安く」が当たり前になった今、商品もサービスも、明確な差がつきにくくなっている。

 だからこそ、企業側は自社商品やサービスについて、他社のものとの差をアピールするわけだが、ただ声高に自社商品の良さを強調しても、消費者や顧客の関心を捉えることは難しい。

 SNSなど、情報発信のツールはどんどん多様になっているが、肝心なのはやはり「言葉」だ。消費者と顧客の心をつかむには、どのような言葉で、どう情報発信をしていけばいいのだろうか。

■顧客自身に「商品を使っているときの絵」をイメージさせる

 そのヒントとなるのが、『値決めの心理作戦 儲かる一言 損する一言』(日本経済新聞出版社刊)だ。

 まずは、本書の著者で公認会計士でもある田中靖浩さんがとある紳士服店でスーツを新調した際に経験した事例を紹介しよう。

 結論からいえば、当初は買うつもりのなかった高額なスーツを田中さんは自ら買ってしまった。なぜなら、接客応対した女性スタッフの展開したトークが実に鮮やかなものだったからだ。

 田中さんが入店するなり、「お客さんのサイズはこれですね」と声をかけてきた女性スタッフ。彼女はしばらくいくつかのやりとりをした後、何着かのスーツを前に田中さんが悩みはじめたタイミングを見計らって、「どんなお仕事をしていらっしゃるのですか」と尋ねた。

 田中さんが、会計士としてコンサルティングや講演の仕事をしていると答えたところ、彼女はひとしきり驚いた上で、さらにこんな言葉を口にする。

「その講演には、どんなお客さまがいらっしゃるのですか?」

 こう訊かれた田中さんは、経営者向けの講演が多いと答えるうち、次第に「経営者に向かって講演する自分」をイメージするようになっていった。結果、自ら進んで最も高額なスーツを選んでしまったという。

 これは、「どんな仕事を?」と質問するだけでなく、さらに「どんなお客さんを相手に?」と訊くことで、顧客のなかに「商品を使っているときのイメージ」を喚起させ、購買行動へと導いた例といえよう。

■アップル店員の「禁句」に滲み出る、独自のホスピタリティ

 もうひとつ、対応のむずかしいクレーム処理において、「こういう言葉選びをすれば、顧客の怒りをやわらげられる」と気づかせてくれる、アップルストアの例を簡単に紹介しよう。

 従来、パソコン業界では、パソコンの修理を依頼してきた顧客を前にして、平気で「クラッシュ」という言葉を使っていた。

 だがアップルでは、この縁起の悪い、不吉な言葉を使うことをよしとしなかった。「クラッシュしていますね」を禁句にし、「正しく動いていませんね」と言うよう徹底したのだ。

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