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ケータイ各社、一斉に「高校生」獲得戦争…auは月額2980円、楽天は大胆割引 

文=佐野正弘/ITライター
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 なぜ今年の大手3社の学割施策が大きく変化したのかというと、その理由は総務省にあると考えられる。総務省が昨年4月に適用した「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」の影響で、スマートフォンの実質0円販売が事実上禁止となった。その影響を受けて大手3社は、番号ポータビリティで乗り換えたユーザーに対してのみ端末価格を極度に優遇し、他社から顧客を奪うという従来の戦略が展開できなくなり、新規ユーザーの獲得機会が極端に減少してしまったのだ。

 それゆえ大手3社が純粋な新規ユーザーを獲得できるのは、実質的に春商戦でスマートフォンデビューを果たす高校生以下の世代に限られてしまったのだ。そこで貴重な顧客獲得機会を逃すまいと、あえて18歳以下を優遇し、充実した割引施策や使い勝手のよい料金プランなどを提供するようになったわけだ。逆に19歳以上、つまり大学生から新社会人となるユーザーは、すでにスマートフォンデビューを果たしていることから純粋な新規獲得にはつながらないため、優遇の対象からやや外れてしまった。

勢いに乗って顧客拡大に打って出るMVNO

 実は今年の春商戦で、戦略に変化が見られたのは大手3社だけではない。これまで春商戦にあまり力を入れていなかったMVNOが、今年は大規模な割引キャンペーンを展開するなどして、加入者獲得に力を入れるようになってきたのだ。

 なかでもそうした動きを象徴しているのが、楽天の「楽天モバイル」である。楽天モバイルは2月15日、春商戦に向けたキャンペーン施策を展開すると発表。しかしその中身は学割施策のように、年齢を限定したキャンペーンではない。

 楽天モバイルが展開するキャンペーンは、5GB以上の通話対応SIMで新規契約し、なおかつ「楽天でんわ5分かけ放題 by楽天モバイル」を申し込んだ後、2回線目を契約すると、2回線目の月額料金が最大で1年間、大幅に割り引かれるというものだ。また、このキャンペーンは2回線目だけでなく、3回線、4回線……というように、何回線でも割引が適用されるとのことで、新規契約に限られるが大きく踏み込んだ割引施策を打ち出してきたことが分かる。

ケータイ各社、一斉に「高校生」獲得戦争…auは月額2980円、楽天は大胆割引 の画像3楽天モバイルは春商戦に向け、ひとりが新規契約するともうひとり以上の基本料が最大1年間、大幅に割り引かれるキャンペーンを展開している

 また、関西電力系のケイ・オプティコムが展開する「mineo」も、データ通信と音声通話に対応した「デュアルタイプ」のサービスを新規契約したユーザーに対して、月額基本料800円分を3カ月間割り引くキャンペーン施策を打ち出している。このように、MVNOの春のキャンペーン施策を見ると、新規契約者を優遇した割引施策を打ち出すケースが多いようだ。

 その理由は、やはり先の総務省の施策を受けて、大手3社からMVNOへとユーザーが流れる動きが急加速しているからであろう。最近ではスマートフォンに詳しい男性だけでなく、価格に敏感なファミリー層や若い世代などがMVNOを選択するケースが増えている。そうした追い風に乗っていっそう加入者を獲得するべく、新規契約者を重視した大規模なキャンペーンを打ち出すMVNOが増えたといえそうだ。

 総務省の影響で新規ユーザーの獲得が困難となり、純粋な新規契約者である高校生以下にターゲットを絞らざるを得ない大手3社と、その大手3社からユーザーを奪って規模を急拡大させ、激しくなる競合同士の争いを勝ち抜きたいMVNO。今年の春商戦で各社が打ち出した施策は、両者の対照的な様子と、勢いの違いを明確に表しているといえそうだ。
(文=佐野正弘/ITライター)

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