ビジネスジャーナル > 企業ニュース > なぜ人は死ぬまで働いてしまうのか?  > 2ページ目
NEW

家族を振り切ってホームから電車に飛び込み自殺…なぜ日本人は「過労で死ぬまで」働くのか?

構成=長井雄一郎/株式会社フォークラス・ライター
【この記事のキーワード】, , ,

なぜ、人は死ぬまで働いてしまうのか?

――今回のテーマである「なぜ、人は死ぬまで働いてしまうのか?」という質問です。過労死の話題になると、インターネット上を中心に「自殺するくらいなら辞めればいいのに」という意見が上がります。

玉木 まず、これは中小も大手も関係ないのですが、企業は新卒や中途で従業員を採用するとき、上司や同僚との協調性のある人、上司や社長の指示に従い業務を完全に実行しようとする人、また責任感の強い人を雇用します。

 そして、雇われるほうも、日本の教育では小さい頃から「協調性を持って他人に迷惑をかけない」「競争は良いこと」という教育を受けているため、指示に従わずに反抗するという性格を持ち合わせていません。企業側は、そのような従順な従業員の性格を悪用するかたちで、結果的に長時間労働やパワハラが蔓延するという構図になっています。

 ところが、ひどい過重労働が続くと、体も心も悲鳴を上げて適応できなくなります。会社を辞めない理由はさまざまですが、ひとつは「自分がこの仕事をしなかったら周囲が困る」という責任感の強さ、2つ目は「会社を辞めたら非正規雇用になって、正規雇用に戻れないのではないか」という不安感があります。

 電通の高橋さんの事件では、母親が「会社を辞めなさい」と、ワタミの事案では周囲の方々が「無理しないで」と助言しています。ところが、前述した責任感や不安感、プレッシャーから精神状態が異常になり、「死ぬくらいなら会社を辞めればいい」という正常な判断力が喪失されてしまうのです。

過労でうつ病になると衝動的に自殺してしまう

――正常な判断力が失われてしまうと、どうなるのでしょうか?

玉木 過重労働によって精神的な病気になった場合、正常な判断ができなくなり、自殺念慮や希死念慮の症状が現れることがあります。自殺のことしか考えられなくなり、やがては実行に至ってしまうのです。これが、うつ病など精神的な病の怖さです。大事なのは、精神的な病気になる前に長時間労働を是正することで、病んでからでは遅いのです。

 また、過労死の怖さは、体力的には「自分は大丈夫」と思っていても、体のほうが先にまいってしまうことです。その結果、突然の心筋梗塞で亡くなるケースもあります。精神疾患については、病んでいるという自覚があっても、自殺念慮が生じたときはストップがかかりません。

 過労死の個別事案には、夫がうつ病になり、妻がずっとそばで支えているにもかかわらず、少し目を離した瞬間に家から出てビルから飛び降り自殺をしたケースや、同じくうつ病の夫が、付き添いの家族を振り切って駅のホームから電車に飛び込んだケースもあります。これらの事案で感じるのは、過労死による自殺を止めるのはかなり難しいということです。

――うつ病を含めた精神疾患は本当に怖いですね。しかし、我慢にも限界があると思うのですが。

玉木 うつ病が「心の風邪」というのは、半分正解ですが半分間違っています。誰もがかかる可能性があるという点では正しいですが、うつ病は場合によっては死に至る病気なのです。心の中で自殺念慮が生じて正常な判断を奪うという点では、風邪よりもはるかに危険です。

 また、長い間我慢して過重労働を継続することで心と体が蝕まれ、より治りにくくなります。もし、うつ病などの症状が少しでもあったら、すぐに医師に診てもらうこと、我慢して過重労働を継続しないこと、が大切です。

家族を振り切ってホームから電車に飛び込み自殺…なぜ日本人は「過労で死ぬまで」働くのか?のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!