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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

村上春樹、その優れたビジネスモデルの秘密…なぜ新規顧客を獲得し続け、常にバカ売れ?

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio

 多くの愛読者が内容の評判を待たずに購買するのも、新作に対する「きっと期待を裏切らない」という信用がそうさせているのだと有馬氏。また、村上氏は作品を発表するスパンが他の一般的な作家よりも長く、期待感をあおる点も老舗の商品に似ているとのこと。

「老舗は品質を守るために大量生産や薄利多売といった売り方はしません。なかには、期待される品質の商品がつくれないなら販売を休止する覚悟でビジネスをしている企業もあります。村上氏も、書こうと思えばもう少し短いインターバルで書けるのかもしれませんが、それを敢えてしていません。期待を裏切らないクオリティを保つためには相応の時間が必要なのでしょう。老舗がじっくりと丹精込めて作った商品は、価格帯にかかわらず顧客は心理的抵抗を持たずに買い求める傾向があります。これは村上氏の作品に期待する読者の心理に通じるものがあると思います」(同)

 小説は1冊の価格は決して高すぎることはないが、「小説の読破」という消費には多くの時間を要する。その分、消費自体を喚起するハードルは他の趣味の分野よりも高いといえる。しかし、「村上作品だから大丈夫」と思う多くの愛読者がいるからこそ、最新刊もベストセラーとなっているのだろう。他方、村上氏の製作の姿勢から、小規模事業者が学ぶべきマーケティングのヒントがあると有馬氏は言う。

村上氏に学ぶ小規模事業者の哲学

「村上氏もある意味で小規模事業者といえます。今でこそ、ビッグネームとなり、大量販売が期待できますが、ここに至るまでには相応の時間を要しました。これまでの丁寧な作品作りの姿勢は、一人一人の読者を大切に考えてのことだと推測できます。一般的な事業で大きな市場を狙うのではなく、限られた既存顧客を大切にしていくマーケティングを『リレーションシップ・マーケティング』といいますが、顧客を裏切らずに長期間信用を積み上げていく姿勢は、競争が激しい時代であっても忘れてはならないビジネスの哲学といえるでしょう。村上氏の作品作りの姿勢からも、そうした方針を読み取ることができます」(同)

 自ら起業しようという高い志を持った人も少なくないだろう。もし小規模事業主として成功したいのであれば、地道な努力を積み重ねたうえで、長く愛顧してくれる顧客を大切にする姿勢を忘れずに持ち続けることが重要だといえるであろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)

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